株式会社レゾナックは、ディープラーニング技術と画像解析を材料検査に活用することで、製品の開発・検査を自動化し、検査にかかる時間を短縮することに成功した。
例えば異方導電フィルムに使われるはんだ粒子の検査時間を1/140に、リチウムイオン二次電池の正負極用導電助剤に使われるグラファイト繊維では検査時間を1/3に短縮することができる。(トップ画ははんだ粒子)

(繊維が重なった部分でも、同じ繊維だと誤認識していない)
従来、はんだ粒子やグラファイト繊維などの検査工程では、目視による検査が多く、多くの時間と工程がかかった。また、各検査員で検査に要する時間が異なることが課題になっていた。
一方で、ディープラーニング技術を使い検査工程を自動化するためには、膨大な学習用の画像やディープラーニング専門の技術者、強力なデータ処理能力を持つコンピュータなどが必要であった。
そこで計算情報科学研究センターの画像解析専任チームは、「少ない画像でも学習・解析させることができる高度な画像解析技術の獲得」「検査に使うディープラーニング技術の絞り込み」「Webアプリケーションの導入」といった独自の取り組みを行った。
これにより、1枚の画像に左右反転や彩度などの調整を行うことで、複数枚の画像を得る技術や、別データの学習済みモデルを対象データでチューニングする転移学習により、数十枚程度の少ない学習用の画像でもディープラーニングを利用可能とした。
また、材料検査に用いる画像解析技術を、特に重要な3項目(算出、測定、分類)に絞ることで、短期間での技術者育成を可能とした。
さらに、高性能なクラウドサーバ上で動作するWebアプリケーションを提供することで、ユーザは業務用モバイルPCから画像解析ができるようになった。クラウドの活用により、ソフトウェア開発者側の保守・管理作業が容易となった。
加えて、実際に運用する製造現場とコミュニケーションをとることにより、高品質な学習用の画像を準備することができた。
これらにより、材料検査の自動化と検査時間の統一化を実現したのだという。
今後、計算情報科学研究センターは、画像解析のノウハウを社内展開して技術者を増やすとともに、画像解析だけでなく、大規模言語モデルを活用した社内向けWebアプリケーションなども開発していく予定だ。
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