機械設備に組み込まれた軸受は、使用を続けていくと条件によっては軽微な「はく離」が発生し、進行すると最悪の場合破損につながることがある。
しかし、はく離が発生した後も、機器の構造や設置場所などによりメンテナンスが容易ではない場合は、運転に支障がない範囲において軸受が使用され続けるケースがある。
軸受の状態は、振動データによる異常検知などにより把握することが可能だが、はく離などの異常が発生した後、どのぐらいの期間、軸受を使用できるのか、「余寿命」を精度良く把握する方法はなく、軸受がまだ使用可能な状態でも早めに交換したり、軸受が破損してから交換するケースが一般的だ。
また、交換時期は、現場作業者が長年の経験などに基づいて判断する事例も多いのだという。
こうした中、NTN株式会社は、複数のAI手法を組み合わせ、軸受の余寿命を予測する技術を開発した。
この技術は、ディープラーニング(深層学習)とベイズ学習を組み合わせることで、軸受のはく離が発生してから破損するまでの余寿命の推定精度を向上させたものだ。
複数のAI手法の中から、畳み込みニューラルネットワークと呼ばれる画像処理に特化したディープラーニングを選択し、軸受の振動データを画像データに変換して利用することで、軸受の損傷状態や余寿命の予測を可能にしている。
さらに、軸受の損傷の進行度合いにおける個体差や測定データのばらつき(誤差)を考慮して、予測値の信頼性を評価する階層ベイズ回帰を組み合わせることで、信頼性の高い予測モデルを確立した。
損傷状態も考慮することで、従来の技術と比較して余寿命の予測精度を約30%向上させている。
なお、この技術は、2017年に国立大学法人大阪大学大学院工学研究科に設立した「NTN次世代協働研究所」における共同研究によるものだ。
NTNでは、センサ技術とIoTを組み合わせ、軸受のメンテナンス性の向上に貢献するサービス・ソリューション分野の取り組みを進めており、軸受の異常を検知する「NTNポータブル異常検知装置」や、軸受の状態を常時監視する軸受診断アプリなど、さまざまな商品やサービスを提供している。
今後は、この技術の実用化に向けた検証を進めるとともに、メンテナンスに関連したサービスへの活用を図るとしている。
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