鉄鋼業の製造現場では世代交代が進んでおり、オペレータの技能伝承が課題だ。鋼板の製造工程では、鋼板の両端や中央部分で波打ちが発生し、それを補正するには、機械による形状の測定やフィードバック制御とオペレータの手動操作による微調整を組み合わせる必要がある。
そのため、経験の浅いオペレータは、熟練者と比較して形状精度や品質要求の異なる製品を製造することが難しく、製品歩留まりの悪化や形状不良による破断トラブルが起きやすいのが実情だ。
こうした課題に対し株式会社日立製作所(以下、日立)は、技能の高い熟練オペレータの操作データと鋼板の形状データの関係性をAIに学習させ、導き出した結果を制御システムに反映することで、質の高い形状制御を自動的に行う技術を2017年に開発し、国内外で冷間圧延自動形状制御システムとして提供している。
一方JFEスチール株式会社では、2021年に自社の製造ラインに同システムを導入し、製品歩留まりの改善・稼働率の向上・自動化によるオペレータ作業負荷の軽減などの効果を上げている。加えて、熟練者層の知識やノウハウが自動的に操業に反映されたことで、トラブル抑止による生産性向上や製品品質の安定化につながっているのだという。
こうした中、JFEスチールと日立は、JFEスチールのコンサルティングと日立の冷間圧延自動形状制御システムを組み合わせたソリューションを、国内外の鉄鋼業向けに提供を開始した。
このソリューションは、AIで圧延機による鋼板の形状補正を自動制御する日立のシステムに、JFEスチールの操業ノウハウを活用したシステム導入と最適操業といったコンサルティングを、ニーズに応じて組み合わせて提供するものだ。
従来、波打つ鋼板の形状を補正するためには、熟練オペレータの手動操作が必要であったが、今回のソリューションにより、技術差に起因する品質の低下や熟練技能の伝承問題を解決し、製品品質の向上を支援する。
今後JFEスチールと日立は、最適なシステム構成を検討し、調整業務を共同で行うとしている。
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