工場等の製造現場では、設備保全のための定期的な点検が不可欠なほか、転落などの危険が伴う高所点検もある。
そこで株式会社NTTデータグループ、NTTコムウェア株式会社、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、三菱ケミカルグループ株式会社は、ネットワークから端末まで、フォトニクス(光)ベースの技術を導入する「IOWN APN」や、AIの活用によるスマートメンテナンスを目指している。
こうした中、4社は、「IOWN APN」を活用したロボットの遠隔操作と、AIを活用した映像解析による、工場設備の遠隔点検の共同検証を行った。
今回の検証では、高速・超低遅延・広帯域の通信を可能とする「IOWN APN」の特徴を生かし、遠隔地からロボットを巡回させる仕組みや、リアルタイムな映像を用いたパイプの異常を検知する仕組みを検証した。
具体的には、お台場から五反田間、複数拠点を経由したネットワークの総距離として、120km離れたAPN環境を構築した。そして、複数のデバイスから高画質な映像を低遅延で遠隔地に送信し、AI解析による設備の異常検知を検証した。
検証の結果、拠点間のAPNにロボットは問題なく接続できた。また、ロボットのカメラからオンデマンドに配信される映像は、遠隔地のPCに作業者が遅延を感じることなく操作でき、作業者が映像を見ながらPCのキーボードやリモコンでロボットを遠隔操作できることが確認された。
また、ロボットのカメラが認識・撮影した映像解析においては、パイプの映像から振動の有無を解析することができた。ロボットは、マーカから解析対象のパイプを認識しており、パイプの認識違いはなかったのだという。
さらに、映像解析からパイプの振動振幅と周波数を取り出すこともできた。ロボット自体もモータなどで振動している中、問題なく映像からパイプの振動を解析でき、パイプが振動している時間を特定することが確認された。
この結果を受けて、実用レベルの参考値として指定した振幅0.1mm、周波数60Hzを解析できるか、三菱ケミカル株式会社岡山事業所設備技術部と動作確認しているとのことだ。
今後は、複数のロボットやデバイスを用いた映像や音などの環境情報の同時取得や、マルチモーダルAI解析を実施するとしている。
また、国際的な非営利団体「IOWN GF」での意見交換を行いながら、APNを利用したソリューションの創出や新たな機能開発を進めていく。次のステップでは、三菱ケミカルグループの製造現場において通信環境を整備し、ロボット活用やAI解析による異常検知について、検証を行う予定だ。
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