感染症は多くの患者の生命に脅威をもたらすこともあり、病院にとって感染症を防ぐことは重要な課題とされている。手術では、術後感染症のリスクを低下する目的で、抗菌薬の予防的投与が有効だが、抗菌薬の多量投与は薬剤費への影響が大きく、耐性菌が発生・増殖するリスクが高くなる。耐性菌による感染症での死亡者数は、現在、世界で年間70万人にのぼる(※1)。
そのため、政府は薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの策定(※2)、院内感染の抗菌薬適正使用支援に対する2018年度診療報酬化(※3)などの施策を行っており、適切な患者に適切な薬を適切な量、適切な期間投与することが重要とされている。
このほど、国立大学法人新潟大学とNECソリューションイノベータ株式会社は、AIを活用して、消化器外科手術患者の手術後感染(※4)を予測するモデルの検証を行った。
消化器外科で手術をした患者の、手術後感染と関係する因子の検証、及び手術後感染を予測した。同検証には予測の根拠を可視化することができるNECのAI技術群「NEC the WISE」の1つである「異種混合学習技術(※5)」を活用。その結果、AUC(※6)85%の予測精度を達成する手術後の感染予測モデルを構築した。また、手術後の感染に関係する年齢、BMI、使用薬剤、手術時間などの因子が可視化された。
同検証では、新潟大学医歯学総合病院の消化器外科手術で入退院した患者、約2,000人の電子カルテのデータを匿名化して用いている(※7)。
※1 [PDF]Antimicrobial Resistance:Tackling a crisis for the health and wealth of nations
※2 薬剤耐性(AMR)対策について – 厚生労働省
※3 平成30年度診療報酬改定Ⅱ-1-5 感染症対策や薬剤耐性対策、医療安全対策の推進
※4 同研究では、消化器外科手術後から退院までの入院期間内において、細菌検査の結果が陽性となった患者を手術後感染患者と定義。
※5 異種混合学習技術:人手では困難であった複雑な予測についても、多種多様なデータの中から精度の高い規則性を自動で発見し高精度な結果を得ることができる解析技術。
※6 「Area Under the Curve」の略称。統計・データ解析で用いられる、判断・分類の精度の良さを0~1で表す指標。最も良い精度は1であり、その場合100%の確率で正しい判断・分類が可能。判別能がランダムである時はAUC=0.5。
※7 技術実証のため、販売・提供はできない。
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