サスティナブルな外科手術データベースを目指す
内視鏡外科手術における暗黙知のデータベース構築は、日本医療開発機構の未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業「臨床現場の医師の暗黙知を利用する医療機器開発システム 「メディカル・デジタル・テストベッド」の構築」の採択事業になっている。
その目的は以下の2点にあるという。
・内視鏡外科医が手術中どのように安全・効率的に手術を進めているか、これまで暗黙知とされてきた手技・判断をデジタル化し、データベースを構築する
・「術野で何が起きているか」をAIに機械学習させ、将来的には手術支援機器・手術評価システムとしての導出を目指す。
この取り組みに当たって活用したのが、日本マイクロソフトが提供するクラウドプラットフォーム「Azure」である。「まずは様々なステータスの手術を検索する機能から、自分たちがアノテーションしてデータベース化した内容を可視化する機能を搭載するかたちになる」と竹下は語る。
どういった情報をデータベース化していくのか、ということについては手術工程(血管処理)や作業・動作、術具、組織(IMA、神経)、起きている現象(軽微な出血)、患者背景(TNM・BMIなど)、術者背景(技術認定医取得有無)などを竹下氏は挙げ、「こういったデータを手術動画と静止画に付与してメタデータにしていく」と述べた。
データの流れについては、以下のような図になっているという。
竹下氏は「全国の協力施設からのデータが委託企業の方に転送されてストレージサーバにアップロードされる。このサーバに臨床側がアクセスを行い、アノテーションをしてデータベース化していく。こうして可視化されたものにエンジニアがアクセスし、データをダウンロードしながら、現在進めているAI手術支援システムなどの開発に繋げていく」とデータの流れに関する説明を加えた。
これまでの内視鏡外科手術のデータベース構築については、大腸外科の術式を対象に進めてきた。今後の展開については「お腹の中のあらゆる臓器に横展開し、データベースをサスティナブルなものに仕上げていくつもりだ」という。
竹下氏は今回の取り組みでマイクロソフトの「Azure」を選んだ理由についても説明した。竹下氏によれば「当初はデータベース化と可視化システムに重きを置いていたが、最終的に機械学習やアノテーション作業を一気通貫で行えるプラットフォームとして「Azure」が秀でているという認識を持った」とし、オープンイノベーションを行うためには「Azure」が最適な環境である、と述べた。
竹下氏が話を終えた後、再び日本マイクロソフト・大山氏が登壇し「日本マイクロソフトは医療機関向けに「AIビジネススクール」を提供し人材育成に励んでいく」と、AI活用に関する情報を付け加えた。
次ページは、「ヘルスケア連携」
無料メルマガ会員に登録しませんか?

1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。