新型コロナウイルス感染症拡大が長期化する中で、地域医療を含む中核病院において、新型コロナウイルス肺炎患者の受け入れ体制を安定的に持続することが益々重要になっている。新型コロナウイルス肺炎患者の看護には重症病床での人工呼吸器管理などの高度な専門性が求められるとともに、新型コロナウイルスに感染して入院する患者数の増加に伴って、一般病床も含めた看護師の業務負担が増す傾向にある。
そのため、患者数や症状に応じて必要になる看護師の業務量を的確に予測し、限られた人員を各病床へ適切に配置することで、病床の有効活用に繋げることが重要である。
国立大学法人 東京医科歯科大学と富士通株式会社は、新型コロナウイルス感染症の診療に関わる医療現場の負担を軽減するシステムを開発するため、新型コロナウイルス肺炎患者の診療情報に基づく重症化予測やそれに伴う看護業務量予測などを行うAIの有効性を検証する共同研究を2021年2月2日~同年9月30日に実施する。
同共同研究では、胸部X線写真を用いた新型コロナウイルス肺炎罹患状況を判定するAIや、血液検査や病歴などの診療情報に基づき重症化を予測するAI、重症化予測データをもとに新型コロナウイルス肺炎患者の治療に伴う看護師の業務量を数値化するAIを活用し、患者の病床移動スケジュールも含め有効性を検証する。
- 胸部X線写真による肺炎罹患判定AI
- 重症化予測AI
- 看護業務量予測AI
東京医科歯科大学が保有する、新型コロナウイルス肺炎患者の胸部X線写真のDICOM(※1)データを、匿名化した上で富士通が開発したAIに学習させ、患者の肺炎の有無や罹患部位をAIが判定する精度を検証する。
新型コロナウイルス肺炎に関する論文から、過去の新型コロナウイルス肺炎患者の中から重症化した患者の血液検査や病歴などの診療情報を、富士通が開発したAIに学習させ、患者の肺炎の病状変化を予測し、ノモグラム図(※2)として可視化する。これにより、新型コロナウイルス肺炎の入院患者一人ひとりの病状変化の予測に応じた治療の優先順位決定や、それに伴う院内の病床管理を支援する。
患者の重篤度に合わせた病床の移動や患者への治療行為、医師のサポートなどといった、新型コロナウイルス肺炎患者に対応する看護師の業務を、その専門性や業務負担などに合わせて数値化し、AIが事前に学習する。重症化予測AIと連携し、今後重症化が予測され一般病床から集中治療室などへ移動する可能性の高い入院患者数とその推移をAIが予測し、看護師の業務量増減の可能性を検証する。
これにより、新型コロナウイルス肺炎の感染状況に応じて、事前予測が難しい患者の病状変化に応じた適切な看護の提供と患者の病床移動スケジュールなどの病床管理を支援する。
今後富士通は、同共同研究を踏まえて、コロナ禍の医療現場を支援するヘルスケアソリューションを開発し、2022年3月末までにサービス提供することを目指すとのことだ。
※1 DICOM:CTやMRI、CRなどで撮影した医用画像のフォーマットと、それらを扱う医用画像機器の通信プロトコルを定義した標準規格。
※2 ノモグラム図:ある関数の計算や変換などを簡易に行うため、計算図表を使用して、複数の因子から数値を予測する数学モデルのこと。 同研究での関数としては、新型コロナウイルス感染症での重症化に寄与する複数の因子(年齢、新型コロナウイルス肺炎の有無など)から予想されるリスクを計算し図示。
プレスリリース提供:富士通
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