国内では少子高齢化や過疎化の影響で、地域間における医療格差が生じている他、医療の高度化・複雑化に伴って、専門医の不足や医療関係者の負担の増加が課題となっている。
「内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」において採択された「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」の社会実装に向けたプロジェクトでは、これらの課題を解決するために、医療現場での診断・治療などさまざまな場面においてAIで支援する医療AIプラットフォームを、医療機関などに幅広く提供することを目指している。
このほど、株式会社AIメディカルサービス(以下、AIM)とソフトバンク株式会社は、同プロジェクトの一環として、内視鏡検査の映像を5Gで伝送してAIで画像診断補助を行う実証実験を2021年3月3日~3月4日に実施した。
同実証実験は、AIMが開発した内視鏡と連携してAI画像解析により疾患有無の判断補助を行うシステムとソフトバンクの5Gネットワークを活用して、離島や過疎地の病院などから遠隔地の専門医に対し、患者の内視鏡検査の映像を5Gでリアルタイムに伝送し、専門医がAIを活用してがんなどの診断補助を行うケースを想定して行われた。
具体的には、内視鏡専門医の立ち会い協力の下、内視鏡の装置とモニターを通信ネットワークでつなぎ、あらかじめ撮影した内視鏡検査の映像を5G/4G経由でモニターに伝送し、画質やスムーズさ、病変(病気による生体の変化)の確認可否についてそれぞれ目視で確認して、通常の内視鏡検査時と比較した。
また、内視鏡検査の映像から画像を切り出して直接同システムで読み込み、内視鏡検査と同じ映像を5G/4Gで伝送した上で先ほどと同じタイミングで画像を切り出し、それぞれ同システムで読み込む。そして、これら2つにおいて同システムが算出した疾患有無の確立を比較した。
内視鏡専門医による伝送映像の比較の結果、画質やスムーズさにおいては、通常の内視鏡検査時と比較して4Gでは映像の乱れがあったが、5Gではほぼ遜色がないことが確認できた。病変の確認可否においては、4Gでは映像の乱れの影響により小さな病変を確認できない、または判断に迷う場合もあるが、5Gでは微細な血管やポリープなども鮮明で確認しやすいことがわかった。
また、同システムによる疾病確率の比較の結果では、内視鏡から直接画像を読み込んだ場合と比較して、5G/4Gを経由した場合ではほぼ同等の正しい数値を算出することができた。
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