バレット食道は、食道の粘膜が胃の粘膜に似た組織に置き換えられてしまう病気であり、バレット食道になると食道がんになる危険性が高くなるとされている。バレット食道の有病率は世界人口の約1%、胃食道逆流症を持つ人では約7%に上り、発がんリスクは30~40倍に上ると言われている。バレット食道に発生する初期の腫瘍を摘除することで、進行がんの発症を防ぐことができるため、罹患者には定期的に内視鏡検査を受けることを推奨されている。
初期の腫瘍は内視鏡により視認できる病変としての特徴が軽微であるためその発見が難しく、欧米では無作為に行う生体検査(ランダム生検)により腫瘍の検出を行うのが標準的な検査方法である。しかし、ランダム生検はコストと時間がかかり、患者の負担も大きく順守率が30~51%と推測されている。その結果最大40%のがんが見逃されている可能性が指摘されている。
このほど、日本電気株式会社と欧州消化器内視鏡学会(European Society of Gastrointestinal Endoscopy)研究委員会委員長であるPradeep Bhandari教授が連携し、100万枚以上のバレット食道の内視鏡画像を専門医の所見と併せてAIに学習させることで、腫瘍候補を検査中に検出するAI技術を開発し、製品として欧州の安全規格であるCEマーク表示の要件に適合したことを発表した。
併せて、AI診断支援医療機器ソフトウェア「WISE VISION Endoscopy」(※)に同技術を搭載し、2021年から欧州において販売を開始する。
同ソフトウェアは、既存の内視鏡機器に接続することで、内視鏡検査時に撮影する画像からその場でAIにより腫瘍候補を検出し、内視鏡医による腫瘍の発見を支援する。既存の内視鏡と同ソフトウェアを搭載した端末およびモニターを接続するだけですぐに利用できる。また、病変候補を通知音で伝え、通知音の種類や音量は利用者の好みに合わせてカスタマイズできる。主要内視鏡メーカー3社の内視鏡に接続可能だ。
トップ画像は、同ソフトウェアの画面イメージである。内視鏡機器から映像が入力されると画面左に表示され、解析が行われる。解析した結果、腫瘍があると判断されたときに静止画が画面右上に表示され、画面右下にはAIが予想したエリアがヒートマップとして表示される。
今回、臨床評価の結果、同技術を搭載した同ソフトウェアで90%以上の腫瘍を検出することができた。これにより、腫瘍を見逃す割合を減らすとともに、内視鏡医の負荷軽減に貢献する。
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