近年、経済産業省から健康行動を誘発する「健康経営オフィス」が推奨され、建物利用者のウエルネスに配慮した建物を評価する「WELL認証」が広がっている。またSDGsやESGの観点からも、利用者の健康性や知的生産性に配慮するスマートビルが注目されている。
鹿島建設株式会社(以下、鹿島)では、緑などの自然要素を室内空間に取り込むバイオフィリックデザインや、人流・環境情報データを収集し様々なサービスの提供につなげるスマートビルの開発を通じて、ウエルネス空間の提供に取り組んでいる。
一方、沖電気工業株式会社(以下、OKI)は、生活習慣病の予防を目指し「行動変容技術(※)」の研究を通じて、独自の行動分析アルゴリズムを備えた行動変容エンジンを開発してきた。これは個人の属性や日常生活で取得できる行動データ、バイタルデータに専門家の知見を掛け合わせ、個々の特性に応じて健康行動に向けた最適な提案メッセージを出力するものである。
このほど、鹿島とOKIは、オフィスワーカーの健康意識向上を目的として、鹿島のオフィスビルのワーカーを対象に、スマートフォンアプリを使用して健康行動を促す行動変容サービスの実証実験を実施した。
同サービスは、建物内の階段・通路・エレベータ(以下、EV)ホールに設置したセンサーやカメラから、ワーカーの行動情報をクラウドに収集し、階段利用などの健康行動を誘発するメッセージをスマートフォンに通知するものである。
スマートフォンに内蔵している加速度センサーや気圧センサーから、ワーカーの歩数や階段利用数などのアクティビティを検知し行動情報と連動することで、長時間のデスクワーク後に階段利用を促すなど、適切なタイミングで行動誘発メッセージを通知することができる。
また、ワーカーが階段を利用するモチベーションの向上や、継続した階段の利用につなげるための仕掛け(階段利用数・歩数情報の表示、利用数・歩数に応じたスタンプ付与による目標達成の見える化など)をアプリに実装している。さらに、EVに設置したカメラから混雑情報を収集して状況にあわせて階段利用を促すメッセージを通知することで、EVの混雑回避にも寄与する。
今後は、個人の健康志向と行動促進の度合いなどに関するデータ分析を進め、同サービスの改良を図る。また、同システムの導入により、エレベータの混雑解消に一定の効果が期待できることから、新型コロナウイルス感染症対策としても提案していくという。
※ 行動変容技術:行動科学や心理学と情報通信技術を組み合わせ、人々の意識と行動を望ましい方向に変容させる技術。
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