CES2022のレポート第三弾は、ヘルステック企業として初めてCESのキーノートに登壇したアボットだ。
レポートの第二弾で、テック企業からクルマメーカーがキーノートを担当する現在について触れたが、ヘルステックはその次を担うテクノロジーというトレンドを感じる。
アボットのCEO、ロバート・フォード氏が登壇し、「ヘルステックは転換点に来た」と述べた。
個人が自分の健康状態を正確に簡単に制御することができるヘルスケア技術がどんどん登場していることを受け、病気を早期発見することが可能になってきたり、医療とテクノロジーが融合し、分散化とデジタル化することで、健康をより細かく管理することが可能となったのだという。
まず紹介されたのが、腕につける小さなバイオ・ウエアラブル・センサーだ。これをつけておくことで、昼夜を問わず血糖値を測定することが可能になるのだ。女優でコメディアンのシェリーシェパード氏が登壇し、2型の糖尿病を患っていた経験を話した。
次に、心臓のインプラント 「Heart Mate 3」が紹介された。これは肺動脈に埋め込まれた小さな圧力センサーが、血流圧と心拍数のデータを医師に送信するものなのだ。そして、問題がある場合は警告を行うことができる。
これらの例は、ヘルステックによって、パーソナルデータを収集することで、深刻な病気に関するイベントを早期に発見し、発生する前に治療することができる、それによって快適に普段の生活ができるようになることが重要だ。
ボディコンピューティングは、個人の状態をモニタリングし、必要な時に医師に情報を伝えるところまで来ている。
次に、パーキンソン病など運動障害を抱えている人のケアを最適化する事例が紹介された。
「神経調節」と呼ばれるアボットの療法がある。これは、低強度の電気インパルスを送ることで脳機能を調節するという治療なのだが、当然人の状況によって調整する必要がある。

これまでは、この調整のために何度も医師のところに足を運ばないといけなかったわけだが、アボットの「ニューロスフィア・バーチャルクリニック」では、どこにいてもリモートで電気療法をチューニングすることができるのだ。
会場では、実際にリモートで、電気インパルスをオン・オフにしたらどうなるのかというビデオが流された。
オフにすると手が震え、オンにすると震えが止まり安定するというデモンストレーションだった。
ところで、何かの病気に罹った際、病院で検査をするわけだが、こういった検査を自宅やホテルなど体調がわるくなったところで分散して検査することができれば検査環境は大きく変わる。
実際、CESでもアボットのCOVID-19 Ag Cardという検査キットが配れていたようだが、これを使うと15分で結果が出て、アボットの提供するスマホアプリで結果を得ることができるのだという。
そして、このキットはユナイテッド航空でも採用されている。
使い方は次のとおりだ。まず、PCでサイトにアクセス、カメラをオンにしながやる。
まず、COVID-19 Ag CARDをカメラに向けキットを認識する。中に入っている綿棒を鼻に入れ、粘膜を取得。キットに格納して再度カメラに向ける。結果が判定され、スマホに証明証が送られてくる。
この結果を空港カウンターで見せれば良いという仕組みだ。
こう言ったキットを提供する中、アボットでは世界中の感染症の権威とネットワークをつくっているのだという。
これが「アボット・パンデミック・ディフェンス連合」と呼ばれていて、次の感染症対策のための連合だ。新しいウィルスが出た場合も解析し、データを公開し、連合に参加していない医師も情報にアクセスできるのだという。
ケニアのマラソン選手マラソンの世界記録保持者であるEliud Kipchoge(エリウド・キプチョゲ)選手は、体内のブドウ糖の状況をリアルタイムにモニタリングし、運動への影響をみているのだという。
こういった、さまざまな知見を生かし、アボットは、350万人のユーザから得られたエビデンスと専門知識により作られた、「Lingo」という新しいカテゴリの消費者向けバイオウエアウエアラブルセンサーを発表した。
Lingoのセンサーを腕に装着するだけで、体が健康を維持したり改善したりする方法をメッセージとして教えてくれるものだ。
グルコース、ケトン、乳酸、将来的にはアルコールの状態をLingoは測定する。そして、栄養や運動に関する改善を教えてくれたり、人間の代謝についての情報を提供するものとなるのだという。
ダイエットや、運動パフォーマンス、回復、アルコールの状態といった、さまざまな体の状態を可視化することで、健康や運動といった我々の基本的な活動を見守ってくれるデバイスとなるのだ。
今回のキーノートを見て、健康とテクノロジーが一緒にいなることで、命を救うことができる可能性を感じた。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。