企業が持続的な経済的価値を創出するためには、そこで働く社員の心身の健康が不可欠であり、企業の無形資産の中でも人的資本は経営の根幹に位置づけられるべきものである。
これまで多くの日本企業が健康経営に取り組んできた。しかし、予防については十人十色の健康感であるにもかかわらず同一のアプローチが中心であり、その実施は個々人に委ねられており、組織としての投資対効果がわからない、企業・健保が実施する施策への参加率や継続率が低いなどの課題があった。
また、昨今の新型コロナウィルスの蔓延に伴い、一気に浸透したテレワークにより職住融合が進み、社員の心身の健康にも影響を及ぼしている。企業が持続的な成長を維持していくためには、テレワークなどで捉えにくくなった社員の心身の不調に対し、早期発見・早期対処することがより一層重要となった。
TIS株式会社と学校法人産業医科大学は共同で、企業価値向上のための戦略的な健康投資を可能とするデータ利活用の研究を行い、組織の生産性向上をサポートするパーソナライズプログラム「サスティナケア」の提供を開始した。
サスティナケアは、企業の健康課題抽出から計画・介入・分析・評価・改善提案まで一気通貫でサポートしPDCAのサイクルを回すプログラムである。医療・ヘルスケア分野でのデータ解析実績と金融機関のセキュアなシステム構築で培ったIT技術を持つTISと、医学的・経営学的側面から働く人の健康を守る産業保健を中核とした研究活動を担う産業医科大学の共同研究成果が実装されている。
今回は、サスティナケアの介入部分を担う「パーソナライズセルフケアアプリ」の提供から分析、レポーティング(評価・改善提案)までを、健康経営に取り組む企業の人事部や健康経営推進部署などに提供する。企業ごとに異なる業務特性や健康課題を抽出し、アプリにて社員個々人の働き方やその日の体調に合わせたセルフケアプログラムを提供する。
具体的には、社員個々人の身体活動量、その日の働き方や体調にあわせてリコメンドするほか、疲労・感情・睡眠などのアセスメントで個々人の変化を可視化・フォローを行う。また、介入成果(生産性の改善・パフォーマンスの向上)の評価、課題の抽出、自律神経測定によりストレスを定量的に可視化する。今後は状況に合わせストレスコーピングなどサポートする機能も提供する予定だという。
アセスメントデータをもとにプレゼンティーズム(※)を数値化し、生産性損失を金銭的価値に置き換え、介入成果を組織のパフォーマンスとして見える化することも可能だ。健康経営の施策担当者は、これらのデータをもとに施策の立案、評価や検証、次の適切なアクションを検討しPDCAを回すことができる。
同アプリを社員に配布し日々の業務の中で使用することで、社員のサポートを行うとともに、企業はアプリから得られる情報をもとに介入の評価や今後への改善策の検討につながる。
※ プレゼンティーズム:出勤しているにも関わらず心身の健康上の問題によりパフォーマンスが上がらない状態のこと。
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