近年、不眠症は高頻度にみられ、不眠症治療に関する日本のガイドラインでは、薬に頼らず睡眠改善する認知行動療法(以下、CBT-I)の有効性が示されているが、専門家が不足しているといった課題がある。
また、最近ではCBT-Iの技法の一部を実装するスマートフォンのアプリケーションなどが開発されているが、症状が軽度の不眠を含む臨床試験での有効性は十分に検討されていなかった。
そうした中、沖電気工業株式会社(以下、OKI)、国立大学法人京都大学、株式会社ヘルステック研究所(HTK)は、スマートフォンアプリを通じて個別化された行動変容メッセージを送る「睡眠プロンプトアプリケーション(以下、SPA)」を開発した。
そして、京都大学が2020年11月から2021年3月まで行った「睡眠の問題を抱えた働く世代を対象とした臨床試験」で、睡眠改善効果が実証されたことを発表した。
SPAは、IoTによる状況把握と行動科学や健康心理学の知見を活用して行動変化を促すOKI独自の技術「行動変容技術」を用いて、個人の状態やタイミングに合わせて睡眠改善行動を誘発するプロンプトと呼ばれるショート・メッセージを送信できる、CBT-Iを応用したスマートフォン向けのアプリケーションだ。
SPAの構成は、OKIが行動変容技術に基づいて独自開発した「行動変容エンジン」に、京都大学が保有する睡眠医学の知見「メッセージ規則」を実装し、ヘルステック研究所が運営している生涯PHR(Personal Health Record)アプリケーション「健康日記」を連携させて動作させている。
京都大学が行った臨床試験では、睡眠の問題を自覚する労働者116名を対象として、4週間の介入期間で並行群間無作為化対照試験を行った。
その結果、睡眠の問題を自覚する労働者においても、不眠症の労働者においても、不眠重症度を示す評価尺度であるISI(Insomnia Severity Index)の有意な改善効果が確認された。
これにより、睡眠の問題を自覚する労働者を対象とした臨床試験において、SPAの有効性が実証された。なお、脱落率はSPA利用者のうち3.2%であった。
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