札幌医科大学と富士通、ヘルスケア領域のデータポータビリティ実現に向けて個人の健康データの活用推進に合意

超高齢化社会、人生100年時代とも言われ、今後も高齢化が進行していく日本においては、年齢を問わず全ての人が健康で安心して生活していくために、医療サービスを受ける場面だけではなく、患者や家族らが自ら日常的に健康や医療に関するデータを活用し、健康を管理することの重要性が増している。

先進的な諸外国では、国家レベルの取り組みとしてHL7 FHIRの国内ルールの策定やデータポータビリティ(※1)を進めており、スマートフォンアプリによる個人の健康データの多目的利用が広がりつつあるが、日本では各医療機関のEHRや個人がスマートフォンなどで管理する情報は利用範囲が限定的であり、個人の健康データ利活用促進のための環境整備が課題となっている。

近年では、各医療機関が所有するEHRや患者個人が所有するバイタルデータを患者一人ひとりが個人で管理・活用する社会の実現に向けた施策が政府、各省庁でも議論、推進化されている。

北海道公立大学法人 札幌医科大学と富士通株式会社は、個人が健康や医療に関するデータを主体的に管理するヘルスケア領域のデータポータビリティの実現に向けて、同大学の附属施設である札幌医科大学附属病院において電子カルテシステムに蓄積された患者の診療データ(Electronic Health Records)(以下、EHR(※2))を含む個人の健康データ(Personal Health Records)(以下、PHR(※3))を活用する取り組みについて合意した。

同取り組みでは、札幌医科大学附属病院と富士通は、EHRやバイタルデータなどの個人の健康データの活用により、データポータビリティの在り方を検討し、札幌医科大学附属病院と北海道内の医療機関との地域医療連携を推進します。それらを実現するため、患者がスマートフォンからEHRを閲覧できる仕組み、患者の健康データをクラウド環境で管理するヘルスケアデータ基盤を構築し、2023年4月より運用を開始するという。

札幌医科大学附属病院は、ヘルスケアデータ基盤に保存された患者のバイタルデータとEHRを閲覧でき、患者の健康状態を詳細に把握することで診療業務に活かし、医療の質向上を図る。北海道内の連携医療機関が同院のEHRおよび患者が同意した個人の健康データを共有、相互利用できる環境を構築することにより、北海道全体の医療の質向上に寄与することを目指す。

一方の富士通は、札幌医科大学附属病院が持つJP Coreに準拠したクラウドベースのEHRへ患者がアクセスするためのスマートフォンアプリ、患者のデータをクラウド環境で管理するヘルスケアデータ基盤を開発する。アプリ上では、個人情報や健康データの外部保存および利用範囲に関する同意を患者自身で選択することができる。富士通はこの同意取得管理に基づいてEHRと患者本人のiPhoneやApple Watchで測定されるバイタルデータなどをヘルスケアデータ基盤へ集約する。

なお、EHRの外部保存にあたっては次世代医療情報標準規格HL7 FHIRの日本国内における実装ガイドであるJP Core(FHIR JP Core 実装ガイドV1.1.1)に沿った形式に変換した上で保存する。

札幌医科大学と富士通、ヘルスケア領域のデータポータビリティ実現に向けて個人の健康データの活用推進に合意
アプリ画面イメージ
同取り組みにより患者は、自身の健康状態とあわせて、検査結果や薬の処方内容といった、これまで紙で病院から受け取っていた診療に関する情報をアプリから時間や場所を問わず確認でき、健康管理に活かすことができる。

そして、患者自身による健康管理や病気の予防、医療機関による治療や予後管理における患者の健康状態の把握、さらには地域医療間連携の強化や患者エンゲージメント(※4)向上などの実現を目指すとしている。

なお、同取り組みは、Appleが提供する「HealthKit」を利用したアプリ開発において同社の技術的サポートを受けている。

※1 データポータビリティ:政府、企業、医療機関などで個別に管理される情報を自分で管理し、自由に持ち運ぶことができるようにすること、その仕組み。
※2 EHR:Electric Health Record。同記事では、各医療機関における診療情報を施設間で連携活用するために統合したデータをさす。
※3 PHR:Personal Health Records。個人の健康・医療・介護に関する情報を統合的に収集し、一元的に保存したデータ。
※4 患者エンゲージメント:患者や家族などが、患者本人の症状や病気、治療方法について、積極的に情報収集や意思決定に参加すること。

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