国内における食品ロス量は、2020年度時点で522万トンに上り、それを企業などが排出する事業系(275万トン)と消費者が排出する家庭系(247万トン)でおよそ半々ずつ分け合っていると推計されている。2015年度以降、食品ロス量は減少しているものの、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にはこれまで以上の削減が必要とされる。特に、企業の食品ロス削減に対する行政や株主、そして消費者からの要請は高まっており、企業での取り組みは年々活発化しているが、今後もなお一層の注力が必要な状況である。
一方、消費者に対する外部からの働きかけは、自主的な取り組みを促す啓発活動を主とせざるを得ず、家庭系の食品ロス削減はあまり進んでいないのが実態だ。
シルタス株式会社、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)、株式会社日立社会情報サービス、株式会社マルイチは、生活における健康的な活動の促進および家庭系・事業系の食品ロスの削減を支援するスマートフォンアプリのサービスが、消費者にどの程度受け入れられ、効果を出せるのかを検証する実証実験を、2023年2月1日から同年2月28日まで宮崎県内で実施する。
同実証実験は、健康状態に関連するデータを可視化することのほか、健康的な生活の実現のための三要素である「運動」「睡眠」「食事」の改善を促す行動を個人の健康状態に応じて提案したり、インセンティブによる動機付けを行ったりすることによる、生活における健康的な活動を促進する効果を検証する。
また、廃棄されやすい食材を使ったレシピをスマートフォンに表示させるといった食品の使い切りを意識させる機能による家庭系の食品ロスの削減と、クーポンの活用で商品を売り切ることによる事業系の食品ロス削減の効果も検証する。
具体的には、モニターに対し、スマートウォッチ型のウェアラブルデバイスからは運動・睡眠データ、体組成計からは身体データ(以下、運動・睡眠データおよび身体データを合わせて「健康関連データ」)を毎日計測する。取得した健康関連データは「ライフログデータ提供サービス」(※1)によって解析され、生活習慣を点数化した「体作りスコア」および健康状態を点数化した「健康スコア」として、スマートフォンアプリ「SIRU+」(※2)に表示する。
スーパーマーケット「マルイチ」で購入した食品の栄養バランスについても、SIRU+に自動連携される購入履歴データ(ID-POS)を基に可視化してスマートフォンに表示する。これらの結果を基に、栄養バランスを一人ひとりに最適化させた食材の購入を促すクーポンや、適切な運動・睡眠を行った際のクーポンを発行したりすることで、生活における健康的な活動を促す。
同実証実験における各社の役割は以下の通り。
- シルタス:SIRU+をベースとした消費者向けアプリケーションの構築
- 日立社会情報サービス:ライフログデータ提供サービスの提供
- マルイチ:同実証実験の実施場所の提供
- 日本総研:同実証実験の全体設計・推進・効果検証
なお、同実証実験は、経済産業省委託事業「令和4年度 流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したサプライチェーンの効率化及び食品ロス削減の事例創出)」に採択された。
※1 ライフログデータ提供サービス:日立社会情報サービスが提供する、ウェアラブルデバイス等のIoTデバイスから得られた日々の食事や睡眠・買い物等のデータを集約・解析するサービス。同実証実験用の機能として、モニターが活用するウェアラブルデバイスや体組成計から健康関連データを収集し、「健康スコア」「体作りスコア」の算出を行う。
※2 SIRU+:シルタスが提供する、買い物データから食事管理をするスマートフォンアプリ。小売の購入データと連携して、購入データから栄養解析を行い、買い物の栄養バランスを可視化。各ユーザーの不足栄養素や食の好み、購入状況を基に最適な食材やレシピのレコメンドを行い、パーソナライズした買い物アドバイスを行う。同事業実験用の機能として、「健康スコア」「体作りスコア」を表示する。また、栄養バランスを考慮したクーポンの発行や、健康関連データやスコアを基にクーポンを発行する。その他、賞味期限・消費期限が短いなどの廃棄されやすい食材を使ったレシピの優先表示を行う。
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