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ライオンと筑波大学、帰宅直後のウイルス住居内感染リスクを可視化するシミュレーションモデルを開発

感染症予防には、病原体が人の体内に到達するまでの感染経路を遮断することが重要だ。しかし、接触感染では、手指や物に付着した病原体が、どのようにして他の人の手指に移っていくのか、これまでは十分に分かっていなかった。

そうした中、国立大学法人筑波大学とライオン株式会社は、実態調査に基づく生活者の行動モデリング及び、各種材質基板とモデル皮膚を使い、家財・携帯品・手指などに付着したウイルス量を推定する、「エージェントベースシミュレーションモデル」を開発した。

このシミュレーションモデルは、仮想空間で自律的に動くエージェント(個人や集合体)がもたらす全体への影響を評価する。

両者は、このシミュレーションモデルを用いて、生活者が外出先から自宅に戻ってきた際に生じる、住居内のウイルスの拡散状態を分析した。

具体的には、接触動作時の手指と物品表面との間のウイルス移動量を定量化するため、新型コロナウイルスと同じエンベロープ型ウイルスであるインフルエンザウイルスを用い、プラスチックや金属、布等の材質基板とモデル皮膚との間のウイルスの移動量を測定。これにより、材質や形状、接触回数等、行動調査から想定されるさまざまな接触条件に対応するウイルスの移動量パラメータを取得した。

ライオンと筑波大学、帰宅直後のウイルス住居内感染リスクを可視化するシミュレーションモデルを開発
家庭内接触感染リスクの可視化フロー

次に、住居内接触行動について、部屋の移動やその部屋で起こる接触回数、接触した物品から新たな物品に触る行動を確率値に変換し、帰宅後 30 分間の生活者の動線と接触行動を再現するシミュレーションモデルを構築した。

このモデルにウイルスの移動量パラメータを組み込むことで、エージェントが訪れた部屋で、物品または手指に付着するウイルス量が算出可能になるとともに、住居内のウイルスの分布がその間取り上で定量的に可視化できるようになった。

その結果、帰宅前に一定量のウイルスが手に付着したと仮定した場合、帰宅直後から手洗いまでの多くの行動で、室内のさまざまな箇所に手指のウイルスが付着していた。これに次の帰宅者が二次接触して、さらに室内に拡散させることが分かった。

そこで、帰宅後の手洗いのタイミングを早めた結果(14回接触以内)、トイレや浴室、寝室等のウイルス付着量は、30分間手を洗わなかった場合のおよそ1/100〜1/1000にまで減少したが、玄関やキッチン等、帰宅後すぐに入りやすい部屋のウイルス量は、手洗いのタイミングに関わらずほとんど変化しなかった。

一方、帰宅直後に玄関でアルコールによる手指消毒を行うと、これらの部屋のウイルス量もおよそ 1/100〜1/1000にまで減少し、ウイルスへの再接触リスク低減効果が、定量的に示された。

ライオンと筑波大学、帰宅直後のウイルス住居内感染リスクを可視化するシミュレーションモデルを開発
玄関での手指消毒後、早めの手洗いを行った場合のウイルス拡散抑制効果の分析結果

また、実際の生活では、単身世帯だけではなく、複数の人物が同居しているケースがある。

そこで、これまでに得た行動確率値やウイルス移動量パラメータを基に、複数名のエージェントが行動するシミュレーションモデルを新たに構築。1人目の帰宅者が持ち込んだウイルスが、2人目の帰宅者の物品への接触行動により、どのように住居内に拡散するかを分析した。

その結果、1人目の帰宅者が玄関で触ったドアノブや照明スイッチ等の家財、鍵やカバン等の所持品にウイルスが残存しており、これらを触った 2人目の帰宅者にウイルスが移動し、住居内に拡散していくことが分かった。

さらに、3同居者全員が、玄関での手指消毒や、早めの手洗いといった、帰宅時の適切なタイミングで衛生行動をとると、日常の住居内の接触感染リスクが低減されることが示唆された。

加えて、住居内に感染者がいた場合の、同居者の接触感染リスクを分析した。

帰宅した同居者が感染者の世話等で寝室に入り、飛沫等で汚染された物品に接触することで、手に大量のウイルスが付着し、他の部屋への移動と物品への接触を通じて、このウイルスが住居内に拡散。他の同居者にも二次的な接触感染リスクが及ぶことが分った。

このリスク低減対策として、手洗いや手指消毒の効果を踏まえて分析したところ、感染者の寝室を出る際、感染者本人と同居者がともに手指消毒を行うことで、二次的な感染のリスクと手指の接触による住居内の汚染範囲を、極小化できることが定量的に示された。

ライオンと筑波大学、帰宅直後のウイルス住居内感染リスクを可視化するシミュレーションモデルを開発
感染者在宅時における手指消毒のウイルス拡散抑制効果の分析結果

今後は、住居内での子どもの行動や、小学校や飲食店等、多数の人が活動する空間に研究対象を広げるとともに、飛沫動態データの導入や他の感染症ウイルス・微生物を対象としたリスク研究を進めていくとしている。

また、衛生行動のタイミングや、さまざまな消毒・抗菌技術、ワクチン等の効果を分析することで、より負担が少なく効果的な感染対策の立案にもつながると期待されている。

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