生成系AIによって、医療やライフサイエンスをはじめ、多くの業界で急速に変革が進んでいる。生成系AIへの関心が高まり続ける中、医療ソフトウェアベンダーは、生成系AIを臨床アプリケーションに応用して、医療業界の臨床医が抱える共通の諸課題を解決しようとしている。
最も一般的な課題の1つが、問診ごとに臨床文書をまとめる必要があることである。これはコンプライアンスや、品質対策、診療報酬のための重要な作業だが、複雑な多くの段階を踏むプロセスでもあり、患者を診察する時間がその分少なくなってしまう。
今日、医療ソフトウェアプロバイダーの多くがテキスト読み上げ機能や自然言語処理(NLP)を利用して、このプロセスの効率化を図っている一方で、これらのアプリケーションを、記録された会話から簡潔な臨床文書に変え、EHRに入力できるようにするための生成系AIがない状況が続いていた。なぜなら、生成系AIの取り扱いは複雑で、複数のAIシステムを統合して1つのまとまりのあるソリューションにするには、膨大なエンジニアリングリソースが必要だからである。
このような生成系AI機能を構築するには、プロバイダーは自社のLLMをトレーニング、あるいは微調整して、正確な臨床文書を生成できるようにする必要がある。
Amazon Web Services, Inc.(以下、AWS)は、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)に対応した新サービス「AWS HealthScribe」を発表した。
同サービスを利用することで、医療ソフトウェアプロバイダーは、音声認識機能と生成系AIを用いて臨床文書を生成し、臨床医の時間の節約につながる臨床アプリケーションを構築できるようになる。医療ソフトウェアプロバイダーは、単一のAPIを用いて、確固たる診療記録を作成し、重要な詳細情報(医学用語や医薬品など)を抜き出して、問診での会話から要約を作成する作業を自動で行い、それらを電子医療記録(EHR)システムに入力できる。
また、Amazon Bedrockをベースとしているため、医療ソフトウェアプロバイダーは、2つの一般的な専門科(総合内科と整形外科)をはじめ、自社アプリケーションに生成系AI機能をすばやく簡単に統合できる。その際、基盤となる機械学習(ML)インフラストラクチャの管理や、医療に特化した独自の大規模言語モデル(LLM)のトレーニングを行う必要がない。
加えて、Amazon Bedrockを利用した生成系AI機能により2つの専門科(総合内科と整形外科)の臨床記録を作成できるため、医師はEHRに入力するための詳細情報を収集する必要がなくなり、問診に集中することができる。AIが生成する臨床記録で使用されるすべての文には、元となる問診の会話記録への参照が含まれており、臨床医は記録の過去の背景情報を容易に確認できる。
さらに、オリジナルの会話記録から生成されたテキストの各行の出典を示すことで、責任あるAIシステムの導入を可能にする。これにより、医師はEHRへの入力の前に、臨床記録を容易に確認できるようになる。データの保存場所は利用者がコントロールできるようになっている。転送中および保管中のデータは全て暗号化され、同サービスを通じて生成された入出力データがモデルのトレーニングに使用されることはない。
AWS HealthScribeを臨床アプリケーションに統合することで、医療提供者は組み込みのテキスト読み上げ機能を利用して、話者の役割を特定し、臨床的関連性に基づき記録をカテゴリー(世間話、主観的なコメント、客観的なコメントなど)に分類する会話記録を作成できる。
そのアプリケーションはAWS HealthScribeのNLPと生成系AI機能を利用して、病状や医薬品などの構造化された医学用語を抽出し、関連する詳細情報(重要な事柄、受診理由、現在の病気の履歴など)を含む会話ベースのメモを生成する。臨床医はこれらを見て、最終的にEHRとしてまとめることができる。
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