NTT、人間の行動分析に基づき最適介入を導出する数理モデルを開発

人間は、「現在バイアス」という認知バイアスを持っており、目先の利得や損失を過大評価する傾向がある。

この現在バイアスの強さは個人により異なり、強い現在バイアスを持つ人は誘惑に負けやすく、困難を先延ばしにしやすい。このような現在バイアスは長期的な目標達成行動の成功を阻害するとされ、その対策が求められていた。

日本電信電話（以下、NTT）は、目先のことを過大評価してしまう人間の、長期的な目標達成行動を分析し、最適な介入を求める数理モデルを開発したと発表した。

今回NTTが開発した数理モデルは、現在バイアス下の人間の行動を数学的に予測し、最適な介入を導き出すことが可能だ。

このモデルでは、現在バイアス下の人間の行動を、有限個のよく知られた関数を用いて書き表すことが可能であり、シミュレーションを行うことなく人間の将来の行動を予測し知ることが可能であるというメリットがある。

さらに、このモデルを用いることで、今まで困難だった介入の最適化問題を現実的な時間で解くことができることが示された。

最適な介入の例として、現在バイアスが弱い人には報酬をまとめて一度に設定することが、逆に現在バイアスが強い人には報酬を分割して高頻度に設定することが最適であることを数学的に示した。

この結果は、現在バイアスが強い人の行動は目先の損得に左右されやすいため、中間的な報酬という目先のゴールを常に意識させることで効果的であることを意味していると解釈できる。

このモデルによって導き出された介入を適用することで、健康や教育などにまつわる個人の目標達成の成功を支援することができる。

NTTは、この成果を現段階では理論的なものであるとし、今後は現実の目標達成タスクにおけるデータを用いてモデルの有効性の検証を行っていくとしている。

さらに、人間が持っている現在バイアス以外の様々な認知バイアスをを考慮し、人間行動に関する科学的知見を組み込んで、より人間らしいふるまいを模倣する数理モデルにしていくことを目指す。

また、ヘルスケア分野だけではなく、教育・財産などの分野を支援するシステムに技術を組み込んでいく計画だ。

なお、この研究成果は、AI分野の国際会議「The 38th AAAI Conference on Artificial Intelligence（AAAI 2024）」で公開されている。

IoTNEWS編集部

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