国内の医療機関において、日々記録・収集される患者の医療情報(リアルワールドデー:以下、RWD)は、現在新薬開発や治療法の確立において重要な役割を果たしている。特に、患者数や症例の少ない希少疾患用医薬品等を開発するにあたり、RWDの活用が重要となる。
一方で、医療情報は個人の機微情報にもあたるため、各医療機関内で厳重に管理されており、開発に必要となる情報連携には工数とコストがかかることが臨床研究における課題となっている。
こうした中、日鉄ソリューションズ株式会社(以下、NSSOL)は、厚生労働省の研究事業において、京都大学、大阪大学大学院医学系研究科医療情報学、国立がん研究センター東病院各機関委託の下、「リアルワールドデータの二次利用加速にむけた多施設データ処理方式の試行研究」の研究プロジェクトを、2023年11月より開始したことを発表した。
この研究では、医療機関及び研究機関における、RWDの抽出・共有を効率化する、新しいシステム導入の実現性を検証する。
具体的には、「Personal Health Train」(※)と呼ばれる技術を活用し、データ提供者とデータ分析者間において、データを直接やり取りすることなく解析結果を得られる仕組みを確立するとのことだ。
※Personal Health Train:研究者自身が作成したRやPythonで書かれたプログラムを、各医療機関の分析用データベースに接続して実行、解析し、解析結果等の結果を得るロールモデル。すでに欧米では適用事例が存在する。
京都大学 医学部附属病院 医療情報企画部 黒田氏は、「RWDを活用した医学研究の発展には、全ての研究者が、複数の病院が安全に蓄積しているデータを手間無く安全に分析出来る仕組みが必要だ。PHTは、解析ソフトを詰め込んで「運行管理者」に預けた「コンテナ」が、「列車」につながれて各病院のデータにアクセス出来る「駅」を巡って、分析結果だけを詰め込んで帰ってくる仕組みだ。病院も研究者も手間無く安全にRWD解析が可能になる。将来は、日本中の臨床研究中核病院に「駅」を持った「鉄道会社」を整備して、我が国のRWD医学研究の活性化を図りたい。」と述べている。
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