胆道がんは、外科切除により根治が目指せる疾患だが、粘膜を表層進展することが特徴だ。これまでは、胆管内を直接観察可能な経口胆道鏡検査を用いて、白色光観察や狭帯域光観察が行われてきたが、病変範囲の診断は容易ではなかった。

こうした中、国立大学法人岡山大学 岡山大学病院(以下、岡山大学病院の研究グループは、胆道がんに対して行う経口胆道鏡検査において、AIを用いて白色光画像を疑似色素散布画像へと変換することで病変範囲を明瞭化し、胆道がんの内視鏡的範囲診断の精度向上に役立つ技術を、株式会社両備システムズと共同開発した。
この研究では、胆道がんに対する経口胆道鏡検査において、「Cycle GAN(Cycle-Consistent Generative Adversarial Networks)」と呼ばれるAIを用いた画像変換技術を使用し、白色光画像から疑似的な色素散布画像への変換を行った。

AIの学習には、消化管内視鏡で得られた白色光画像と、実際の色素散布画像のデータセットを用いた。
40名の胆道がん患者に対して経口胆道鏡検査を行い、白色光画像、狭帯域光画像、疑似色素散布画像を記録した。
3名の内視鏡専門医が、各画像の表面構造、表面微小血管、病変境界の視認性を評価したところ、AIによる疑似色素散布画像は白色光画像および狭帯域光画像と比べて、表面構造と病変境界の視認性が有意に優れており、病変の範囲診断に有用であることが示された。
これにより、病変部の境界が明瞭化され、内視鏡専門医による範囲診断の精度が向上することが示された。同技術は、胆道がん範囲診断のための新たな技術であり、適切な術式決定を行うことで、胆道がんの予後延長に寄与することが期待されている。
今後は、より多数例での検証を行うとともに、AIによるリアルタイム診断の開発や良悪性診断プログラムの開発なども視野に入れて、研究を進めていく予定だ。
また、岡山大学病院と両備システムズは、他部位の疾患についても製品化に向けて研究を推進しており、大腸や膵臓分野でのAI画像診断支援や、内視鏡染色検査でのAI技術活用を進めて、社会実装化を目指すとしている。
なお、この研究成果は、米国の米国消化器内視鏡学会の公式ジャーナルである「Gastrointestinal Endoscopy」のオンライン版で、2024年6月13日に公開された。
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