富士通株式会社は、海外で承認された新薬が日本で使えないドラッグ・ロスの課題解決に向けて、製薬企業や医療機関などと共に、治験領域で医療データを活用した新たなエコシステムを構築することで、国際共同治験を日本へ誘致する取り組みを開始した。
富士通は、治験プラットフォームを提供する米国スタートアップ企業であるParadigm Health, Inc.(以下、Paradigm)と2024年7月に戦略的パートナーシップ契約を締結している。
今回、Paradigmの治験プラットフォームと、富士通の医療データ利活用基盤「Healthy Living Platform」およびAIサービス「Fujitsu Kozuchi」を活用することで、医療機関が持つ医療データの収集や加工を促進し、治験計画業務の効率化と期間短縮を目指す。
具体的には、富士通が医療データ利活用基盤「Healthy Living Platform」を通じて医療機関から収集した診療データやゲノムなどの臨床データを、AIサービス「Fujitsu Kozuchi」のLLMを用いて各種規制に準拠した形式に加工し、Paradigmに提供する。
またParadigmは、同社の治験プラットフォーム上でこれらのデータを分析し、治験の計画および実施に必要なインサイトを製薬企業に提供することで、治験計画段階において治験を実施する医療機関や患者分布の実態を加味できるようになるというものだ。
医療機関も、Paradigmの治験プラットフォーム上で、患者が参加できる治験の情報を早期に把握できるため、適切なタイミングで患者に治験の参加を促しやすくなる。両社は、2024年9月から、臨床研究中核病院への提供を皮切りに、これらのソリューションを展開していく計画だ。
さらに、「Healthy Living」の新規オファリング「Patient-centric Clinical Trials」として、富士通のLLMを活用した治験文書の自動作成サービスを、2024年8月26日より提供開始する。
「Patient-centric Clinical Trials」は、製薬企業の既存ドキュメントを、法規制に準拠したデータ構造へと自動変換するものだ。さらに、熟練者が実施していた情報の検索や要約、法規制に則った表記や翻訳などの作業を可能とする富士通の治験特化型LLMにより、これら変換データから治験関連のドキュメントを自動生成する。
なお、オファリングの実証試験を製薬企業と行った結果、各ドキュメントの80%をLLMで自動作成できたのだという。これにより、富士通の試算では、ドキュメント作成に要する期間が従来の50%まで削減する見込みだ。
今後は、さらなるパートナーとの提携やオファリングの拡充により、治験計画業務に加え、治験の実行段階を含めたプロセス全体を包括的に支援するとしている。
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