細胞培養技術を用いる抗体医薬品や細胞医薬品は、培養期間が長く、培地の価格も高いことが商業向け大量生産における課題となっている。
低コストかつ高品質の細胞培養を実現するためには、効率的な培養を可能にする最適なパラメータ(媒介変数)の設定が重要だ。細胞培養に関わる主なパラメータとしては、栄養素となるアミノ酸、ビタミン等の濃度や培養環境の温度、pHなどが挙げられる。
ただし、培地成分だけでも100種類近く存在し、細胞ごとに異なる培地の組成や濃度を検討する場合、その組み合わせは数兆通りに達する。従来、細胞培養の条件は、経験豊富な研究者や技術者が検討していたが、得られる培養結果や作業効率には依然として課題があった。
こうした中、エピストラ株式会社と株式会社島津製作所は、2022年2月より協業を開始し、細胞培養最適化支援ソフトウェア「CellTune」を共同開発した。そして今回、「CellTune」を島津製作所より発売することを発表した。
「CellTune」には、エピストラの実験条件探索AI「Epistra Accelerate」が搭載されており、抗体をはじめとしたバイオ医薬品生産、再生医療での治療用細胞生産、有用物質の工業的発酵生産など、細胞培養技術を用いる研究開発現場での条件検討の効率化を実現するソフトウェアだ。
「Epistra Accelerate」では、複数成分の一括条件検討を実施し、成分間の交互作用を評価しながら最適な実験条件を探索できる。
具体的には、島津製作所製の液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)および「LC/MS/MS メソッドパッケージ 細胞培養プロファイリング Ver.3」によって計測される培養上清成分(144成分)などのデータを利用して、「Epistra Accelerate」による培養状態の推定と、その推定に基づく実験条件を生成する。
また、「CellTune」には、培地成分や培養環境パラメータに対する統計解析に必要な一連の処理プラグラム群である「解析レシピ」が用意されており、ユーザは、使用する解析レシピの選択と解析パラメータ値(閾値など)を設定することで、評価指標に対する重要成分の抽出などの解析結果を取得することができる。
さらに「CellTune」は、実験条件と培養実験結果のデータを活用して、培養成績の予測モデルを生成する。この予測モデルに基づき、培養成績の向上が期待できる条件を探索し、次回実験条件として出力する。この予測モデルは、実験条件と培養実験結果のデータを入力する度に更新されて予測精度が向上するため、効率的に実験条件を探索することが可能だ。
今後は、「CellTune」のユーザサポートとして、エピストラによる実験計画コンサルティングや、培養実験データ等の統計解析サポートも提供予定とのことだ。
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