「六本木フライトシミュレータサロン」で飛行機パイロットへの道を身近に ―飛行訓練学校のFSO 益子寛氏インタビュー

株式会社FSOとツギクル株式会社は本年8月1日、共同で「六本木フライトシミュレータサロン」を開設した。

「六本木フライトシミュレータサロン」は、実際にパイロットの訓練で使用されるモーションコントロール機能を搭載したフライトシミュレータシステムであるPrecision Flight Controls社のMFD(米国連邦航空局認定取得済み、国土交通省認定を準備中)とRedbird社のThe JAYを備えており、パイロットの訓練および体験用のプログラムを受けることができる。

また、体験用プログラムは一般でも利用が可能で、子供のフライト体験なども受け付けている。

フライトシミュレーションというとホビーユースのものも登場しているが、実際に飛行機を飛ばすパイロットの養成となると仮想空間上でよりリアルに飛行を体験することが重要になる。

そこで、パイロットの養成事業を行っている「六本木フライトシミュレータサロン」を運営する株式会社FSO 益子寛氏に話を伺った。

シミュレーターを活用したプロパイロット育成コースの開設

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): 御社が取り組まれている事業について教えてください。

株式会社FSO 益子寛氏(以下、益子): FSOでは主にパイロットの養成事業を行っています。本社は沖縄にあり、米軍の空軍基地をルーツとしています。米軍基地には軽飛行機を楽しむようなフライトクラブがあり、米軍基地関係者の福利厚生のために設置されています。

そのフライトクラブでは自家用操縦士を始め事業用操縦士や教官のパイロット免許の取得が出来たのですが、そのアメリカ方式の訓練ノウハウを活用して日本人にもできることなのではと考え、アミューズメント性を持たせた結果、基地の外でフライトシミュレーター事業を10年ほど前から取り組みはじめ、現在まで活動を続けています。

現在我々が訓練センターを置く沖縄県宮古島市のみやこ下地島空港は、元々エアライン国内大手2社が訓練の拠点として活用してきましたが、シミュレーターを使った訓練方式が主流となりその2社が撤退したため、沖縄県の下地島空港利活用事業として公募があり、FSOのパイロット訓練事業が採択され今に至っています。現時点ではまだ飛行機は飛んでいないのですが、今後導入する計画で準備を進めています。

パイロットの養成を行うにあたり、まず国内でシミュレータを使って訓練、飛行機の勉強、英語の勉強をして、コミュニケーションの能力を高めてもらい、その後アメリカのフライトスクール、航空大学へ進学、プロパイロットとしてアメリカに就職するコースを開設しました。

コロナの影響で航空業界も大きな変化をしていいます。チャーター機ビジネスは需要拡大していることから、チャーター機パイロットを育成する新たなコースも開設します。今からできることを提案しながら、パイロットへの夢を持つ人たちを迎えいれていきたいというところです。

アメリカ方式の航空教育は遊びから導入するのが特徴です。いろいろな方々に航空を啓蒙する、航空のことを知ってもらってパイロットになりたいと思うきっかけを与える、そういった底辺の需要喚起をしたいという目的で今回のサービスを提供し始めました。

「六本木フライトシミュレータサロン」で飛行機パイロットへの道を身近に ―飛行訓練学校のFSO 益子寛氏インタビュー
株式会社FSO 益子寛氏

日本でエアラインパイロットになる道のりの険しさ

小泉: 先ほどのプロパイロットになるコースでは全体でどのくらいの期間が必要なのでしょうか。

益子: まず日本のパイロットになるためには、航空大学校や操縦科のある私立大学を卒業するか、航空会社の自社養成パイロット試験に合格するか、自費でパイロット資格を取得した後に航空会社に採用されるのが一般的です。

しかし大学を出てすぐにパイロットになれるかというと実際はそうではなく、長い道のりを経てやっとエアラインパイロットになるというものなんですが、副操縦士昇格という関門で振り落とされる方も多くいます。

そういった日本のルートだと一度クビになると他に行ける可能性は低く、高額な訓練費の返済に頭を抱えるケースが多くあります。世界のスタンダードなエアラインパイロットになる道というのは、小さいころから飛行機に慣れ親しんで、飛行機で遊ぶことを知っている、飛行機が身近にある環境でパイロットになりたいと思う子どもたちが大勢いる。なので高校生の時にライセンスを取得する環境があるのです。

小泉: 日本の自動車学校みたいなものですね。

益子: そうです、同じです。アメリカの子どもたちは車にあこがれるのと同じように飛行機にあこがれて、パイロットを目指し始めます。ライセンスを取得したのち、いきなりエアラインパイロットになるのではなく、まずは操縦を教える教官になり、後から続く子どもたちへ教育を行う中で、教官・パイロットとしての素養を磨き、何千時間という経験をつけて初めてエアラインに行く、というのがアメリカのエアラインパイロットになる一般的なルートです。FSOではこの徐々にスキルを磨いてアメリカのように段階を踏んでエアラインパイロットになってもらう「教えることが学ぶこと=アメリカ方式のパイロット訓練」を用意しています。

小泉: なのでお子さん向けの体験コースも用意されているんですね。

益子: 学校生徒向けのキャリア教育も、子供向けの体験コースも実施しています。

FSOの航空留学は、フライトスクールが1年間、アメリカの航空大学で2~3年間、就労許可が下りて働ける環境で2~5年間、アメリカでの訓練と大学での学業後、仕事を請け負うという流れになっています。また、その事前準備のための様々なコースを用意しています。

日本の人たちがアメリカの大学に行ってパイロットになる勉強をする際に足かせとなってしまうのが、英語、英語での学習、アメリカ社会で必要なコミュニケーション能力の不足です。きちんとコースを用意しても、こういった壁にぶつかり途中で脱落するということが起きてしまいます。

FSOが用意したルートでもやはり数年間の合計費用は2千万円を超えるコストがかかってきますので、アメリカに渡り、英語ができない状態でいきなり英語でパイロットの勉強を行うのではなく、その学習を事前に日本語で行うなど、日本にいる間にしっかりと学べるようサポートしています。下地島訓練センターはアメリカのフライトスクールを模擬してプログラムが設計されています。カリキュラム、機材、教官、言語は英語です。

小泉: 下地島での訓練はシミュレーターなのでしょうか。

益子: 現在はシミュレータですが、飛行機を用意する準備を始めています。

FSOの原点であるアメリカ航空教育の理念に基づいた飛行機の運用をする私たちはアメリカのフライトスクールを日本に立ち上げたいなと考えています。

小泉: アメリカでパイロットになった方がアメリカの企業で飛ぶというのはわかるんですが、その方は日本で飛ぶことも出来るのでしょうか。

益子: 現在FSOの訓練生が進学する大学はエンブリー・リドル航空大学というアメリカの航空大学で、歴史があり航空業界への人材貢献数も高いため世界中から求人が来ています。そうやって世界での経験を経て日本に戻り、国内で活躍している日本人パイロットもいます。

小泉: いきなり実地で飛べる人として入社出来るということですね。

益子: そうです。海外で経験をつけた経験者枠として外国人のパイロット枠で応募するというイメージです。

小泉: プロパイロットになりたいというわけではない、個人的にセスナなどの小型の飛行機に乗りたいという人へ向けたコースはあるのでしょうか。

益子: 特に日本国内では法制度化されていないスポーツパイロット資格は、必要要件も低く、取得費用も抑えられていますし、そこからアップグレードしていく通常の自家用操縦士資格への方法もあります。

「六本木フライトシミュレータサロン」で飛行機パイロットへの道を身近に ―飛行訓練学校のFSO 益子寛氏インタビュー
飛行シミュレーションの様子。窓からは飛行機の動きと連動した海辺の背景が見える。

次ページ:シミュレータでの反復練習で実機での訓練と近い効果が得られる

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