1940年9月に発見され、3ヵ月後に文化遺産として登録されたラスコー洞窟は、その内部の壁画の完成度の高さ、脆さ、保存の難しさで世界中に知られている。
1963年に一般公開が恒久的に中止されて以来、ラスコー洞窟の所在地であるヌーヴェル=アキテーヌ地域圏の文化問題局は、1979年にユネスコの世界遺産にも指定された洞窟壁画のデジタル化に幾度となく取り組んできた。洞窟内は依然として絵画の保全には危機的な状態であるため、洞内に滞在できる時間は限られており、保護作業にあたるスタッフでさえ年間200時間までしか許されていない。
ダッソー・システムズとシテ建築遺産博物館は、複数ユーザーが利用できる実物大バーチャルリアリティに特化した研究イノベーション・スペース「Exaltemps」を2019年に開設している。
このほど、ダッソー・システムズ、シテ建築遺産博物館、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏文化問題局の三者は合同で、ダッソー・システムとExaltempsが共同開発した新しいツールを用いて、ラスコー洞窟を原寸大のスケール感で体験できるバーチャルツイン「La grotte de Lascaux 1/1 バーチャルツイン」を公開した。
今回、新しいツールにヌーヴェル=アキテーヌ地域圏文化問題局のデジタル化活動によって蓄積されてきた未加工のデータを統合したことで、3次元の仮想環境上で3つの組織を連携させることが可能になり、来館者が没入体験できる複数のルートを設計することができた。
バーチャルリアリティ空間では、装置とヘッドセットを装着した最大6名のグループがガイドと共に、ラスコー洞窟を細部まで詳しく見るために作り上げられた235メートルのギャラリーを探険することができる。参加者はその空間を自由に動き回ることができ、アバターを通じてお互いに交流することもできる。
また、洞窟に出入りできる保護作業のスタッフたちと同様に、洞内に敷かれたターミナル通路に沿って進み、Axial Diverticulumエリアの終点で四つん這いになったり、今まで一度も公開されていないChamber of the felinesの狭いエリアを歩いて鑑賞したりすることもできる。
バーチャルツインを使うことで、学生や研究者など様々な人がリアルさと没入感をもってラスコー洞窟を体験できるようになるという。特別なスキルがなくても、複数のユーザーが同時に実物大のバーチャルリアリティを体験できる空間を簡単に構築することができる。
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