Matterportは、2022年4月14日にオンラインで開催された「マーターポート『日本法人設立』事業戦略 記者発表会」にて、日本法人となるマーターポート株式会社を設立し、同社の執行役員社長に蕭敬和(しょう けいわ)氏が就任したことを発表した。
また、新製品として、スマートフォンを装着して空間撮影を行うことができる「Matterport AXIS」も同時に発表された。
そこで本稿では、マーターポートが提供するサービスの概要と、今回発表された日本法人設立の背景や展望、新製品「Matterport AXIS」について紹介する。
建物空間のデジタルツインを実現する「Matterport」の概要
まずはマーターポートが提供しているサービスについて説明する。
マーターポートは、建物空間のデジタルツインを作成するソフトウェアプラットフォーム「Matterport」を、米国では2011年より、日本では2017年より、不動産業・建設業・宿泊業・小売業・製造業を中心に提供している。
LiDARを搭載するスキャナ、自社製のMatterport Pro2カメラ、Matterport Captureアプリをインストールしたスマートフォンなど、様々な端末で建物空間をキャプチャし、デジタルツインを作成することができる。
マーターポートが提供する「Matterport Pro2カメラ」には、RGBイメージセンサとパターン照射方式の3Dセンサが搭載されており、4K及び点群データを取得することができる。
「Matterport Pro2カメラ」と撮影アプリである「Matterport Capture」をWi-Fi接続することで、アプリのボタンを押すと「Matterport Pro2カメラ」が自動的に360度回転しながら、空間の立体的な形状の3Dスキャン及び画像撮影が実施される。

この撮影を2〜3メートルおきに実施し、「Matterport」のクラウドへデータがアップロードされると、AI技術により3Dのデータ、画像、図面を分析し、画像合成と3Dモデルの生成と配信が自動で行われる。
最終的には、発行されたURLをWebに掲載し、様々なデバイスから閲覧することが可能になる。
その他にも、作成された3Dモデルの撮影や動画のダウンロード、3Dモデルに対するラベルの付与や計測、空間へのテキスト・写真・動画・ドキュメントを貼り付ける、などの機能が構築されている。
マーターポートはハードウェアの販売に加え、撮影代行サービスや、画像分析や合成処理および配信を行うクラウドのサブスクリプション展開、機能拡張を行うための開発環境をライセンスにて提供している。

一般的な360°パノラマカメラを用いたVRでは、パノラマ写真を画面遷移して表示しているのみのため、空間を立体的に見たり、空間内を歩くウォークスルー体験を得ることはできないが、Matterportの3Dデジタルツイン技術はウォークスルーが可能で、建物全体を実写の立体像として俯瞰的に見ることができる。
日本における幅広い領域での、新たな活用へ向けた取り組み
今回日本法人設立に至った経緯について、日本法人の執行役員社長に就任した蕭氏は、「需要の増加と国内販売およびサービス提供の基盤を強化するためだ」と述べた。
具体的には、「チャネル販売網とエリアの拡大」「導入対象の業界・業種の拡大」「デジタルツインの内製化を推進」といった施策により、国内のサービス強化を行っていくのだという。
チャネル販売網とエリアに関しては、現在は販売リセラーがある首都圏中心かつ特定の業界に特化しているのに対し、今後は全国の流通販売会社との販売契約や代理店制度を確立させ、全国エリアおよび全領域をカバーしていくとしている。
また、法人営業販社やSI会社、プラットフォームベンダーとの協業も行われていく予定だ。
導入対象と業種に関しては、日本での「Matterport」展開当時、撮影業や不動産、建設・建築の顧客が中心だったのに対し、小売業や工場、製造業や宿泊業などの領域に導入を広げていくのだとした。

デジタルツインの内省化に関しては、これまで販売促進に活用されることが多かったVR技術を、企業の内部業務での活用にフォーカスを当てるとしている。
例えば、建設業における現況調査や竣工記録、製造業や工業プラントにおける現状・劣化状態の記録や確認、機械やラインの入れ替え計画、アパレル・小売業における店内設計や新商品のビジュアル周知など、移動費・人件費・制作費の削減や、効率化を実現するために活用してほしいと述べた。
また、これまでは、こうした社内情報の活用は外部の制作会社に外注できないという課題があったが、内製化を促進させることで実現可能なのだと語った。
デジタルツインをより身近にする「Matterport AXIS」
こうした内製化実現へ向けて重要となるのが、今回発表された新製品「Matterport AXIS」だ。
「Matterport」は、スマートフォンやタブレットのイメージセンサを活用したキャプチャにも対応しており、スマートフォン単体でのデジタルツインを作成することも可能だ。
スマートフォンでのデジタルツインの速度や精度を上げるため、スマートフォンが取り付けられる、モータ駆動式の自動回転雲台が「Matterport AXIS」だ。

設備導入への障壁が少なく、スマートフォンを活用するという操作性により、誰でも再現できる点がポイントだと蕭氏は言う。
その他にも、頻繁な撮影が必要な場合や、遠隔空間が多数存在する事業者にとって、「Matterport AXIS」の有用性が高いと述べた。

「Matterport AXIS」の発売はアメリカとヨーロッパにてすでに提供されており、日本においては5月中旬以降の発売を予定しているとのことだ。
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