NEXCO東日本グループは、毎日通行台数約270万台が利用する営業延長約4,000Km、約500箇所のインターチェンジ(SIC含む)を有する高速道路等のインフラを、24時間365日維持管理している。
高速道路を維持管理するため、株式会社ネクスコ東日本エンジニアリングでは、高度な点検・保守技術を有する技術者が必要不可欠であり、それらを育成することを目的に、研修施設である、ネクスコ東日本エンジニアリング テクニカル・トレーニングセンター(以下、TTC)を設立した。
TTCでは、「施設設備と土木構造物のメンテナンスに関する技量向上」を目的とし、実際に高速道路上で使われているETC設備や土木構造物のカットモデルなどの実物を使用し、メンテナンスや故障対応等の実践的な教育・訓練を行っている。
こうした中、DataMesh株式会社は、このTTCにおいて、デジタルツイン技術とMR技術を活用した教育研修用ツールの開発支援を行った。
これまで、ETC設備の動作を学ぶ際には、車両が進入しセンサを通過するタイミングの無線通信の流れ、制御信号やデータの流れ、路側表示や機器動作について、多くの教材を用いて説明したのち、実際のETC設備機器で確認していた。
しかし、複数の教材を関連付けて理解することは複雑で時間を要し、実機では無線通信や制御信号の流れは実際に見ることが不可能で、研修生のイメージに頼るほかなかったのだという。
また、トンネル非常用設備の自動弁の動作原理や、設備内を通過する水の流れの説明においても、実機のカットモデルやパネルイラストを用いて行っても、研修生が構造や動作原理についてイメージすることが難しく、理解度に差異が生ずることや、講師による説明も多少異なることから研修生全員に同じ情報を提供できていないことが課題であった。
そこで今回、ETC設備、トンネル非常用設備をデジタルツイン技術で3Dデータとして再現し、Microsoft社のHoloLens 2、Apple社のiPadのデバイスを活用することで、ETC設備研修とトンネル非常用設備研修にデジタルツイン技術を取り入れた。
ETC設備研修では、デジタルツイン技術を活用してETC設備を精密な3Dモデルで再現することで、センサから照射される赤外線や車両検知の仕組みを見える化した。検知によって無線通信が開始され、制御信号が路側機からサーバに流れる状況も可視化し、機器動作まで再現することにより、ETCの一連の動作の仕組みをデジタルツイン教材に集約することができた。
また、タブレットなどのデバイス間の連携を行うことで、遠隔地からの研修参加も可能となった。
トンネル非常用設備研修ではこれまで、トンネル内の車両火災時に使用する非常用設備の水噴霧装置で、水流を制御している自動弁装置の内部は目視で確認することができず、構造を理解することが非常に困難であった。
そこで、今回のデジタルツイン技術により、車両火災発生から放水までの機器動作を再現し、自動弁装置内部のバルブの動きや水の流れなどの内部構造を可視化した。また、動作不良時の調査ポイントや復旧方法の習得が可能な疑似再現機能も追加することで、理解度の向上が可能となった。
今後NEXCO東日本グループは、オンライン研修への展開も視野に入れ、HoloLens 2及びデジタルツイン技術、MR技術を活用した研修への適用拡大を検討していくとしている。
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