株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)は、遠隔地3D車両情報共有システムを用いて、Toyota Motor Thailand Co., Ltd.(タイ)、Toyota Motor Philippines Corp.(フィリピン)、PT. Toyota-Astra Motor(インドネシア)およびトヨタ多治見サービスセンター(以下、多治見SC)を結ぶVR集合教育の実証実験に成功したと発表した。
同実証実験は、本年10月19日に発売された新型レクサスLSの技術講習会を対象に実施され、実車による集合教育を補完し、教育の充実が可能であることが確認されたという。
背景
トヨタでは従来から、新型車の機構や構造に対するサービス技術情報を共有するため、世界中の拠点から日本の多治見SCにエンジニアを集め、実車を用いた集合教育を行っている。しかしコストや時間的な制約もあり、大勢の参加には限界があった。
そこで、これまで参加できなかったエンジニアへも、より効率的かつ効果的に教育を行える環境の実現に向け、本年6月にISID が開発パートナーとなり、VRを活用した遠隔地3D車両情報共有システムを開発した。
今回の実証実験は、アジア3拠点を対象とした集合教育にこのシステムを適用し、その有用性を実証するために行われたものだ。
VR集合教育の概要と成果
集合教育は、新型レクサスLSのサービス技術習得をテーマに、多治見SCの講師がアジア3拠点のエンジニアに向けてVR空間上で講習する形式で実施され、バッテリーの交換方法や新設部品の構成等約10項目の技術情報説明が行われた。
従来の講習会と同様の説明に加え、実車を使った講習では見ることができない車両内部の構造を確認したり、リアルタイムにカットモデルを作るなど、VR映像ならではの講習が盛り込まれ、VRの活用によりこれまで以上に理解が深まることを確認したという。
またグローバルの複数拠点かつ多人数に向けて、VR映像を一斉に配信し、遅延なくコミュニケーションがとれることも実証された。今回の集合教育には、多治見SCの講師とアジア3拠点のエンジニア合わせて約50名が参加した。
遠隔地3D車両情報共有システムの概要
ISIDがトヨタ向けに開発した遠隔地3D車両情報共有システムは、車両の3D設計データを、VR技術を用いて実物大のリアルな3D画像としてヘッドマウント・ディスプレイ上に再現し、遠隔地にいる複数のユーザーが、同じ空間で1台の車両を眺めているかのような仮想環境を提供するシステムだ。
車両の精緻な3D画像に加え、機構のアニメーション表示、モデルと視点の自由な移動、指示箇所へのマークの付与、ドキュメントの閲覧、音声会話、アバター表示等の機能を有し、視覚的かつ効率的なコミュニケーション手段を提供する。
3Dゲーム開発プラットフォームとして高いシェアを有する“Unity”ソフトウエアと、オンラインゲーム等で遠隔地ユーザー間のコミュニケーションを実現するネットワークエンジン“Photon”を利用し、これにISIDが開発した直感的なユーザーインターフェースを組み合わせた。
今回の実証実験では、システム構築環境としてパブリッククラウドを活用し、各拠点からインターネット回線で接続する構成とした。
ISIDは今回の実証実験で確認された成果と課題を踏まえ、同システムのさらなる機能向上を図り、トヨタにおける本格導入を支援するとともに、今後は様々な業種、業態の製造業に向けて本システムを提供していく計画だという。
【関連リンク】
・電通国際情報サービス(ISID)
・トヨタ(TOYOTA)
・Unity
・Photon
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。