医療現場では、患者の症状変化や回復状況を診るために、患者の歩き方の特徴を観察することが重要と言われている。特に、筋骨格・脳神経・循環器系などの疾病の影響で歩行異常が現れるという。いち早く症状の兆候を見つけるために、理学療法士が観察するのと同等の情報をデジタルで捉える歩行分析技術が求められている。
歩行特徴を定量データにして比較・分析するための従来技術として、機械学習やルールベースアルゴリズムによる方式が多数提案されており、医療現場からも注目されている。
しかし、理学療法士が接する患者の疾病は歩行への影響の出方も疾病や重篤度合い、障害部位などによって大きく異なるため、従来技術では、対象とする歩き方が限られていたり、学習のための歩行データを十分に準備することができず、多様に存在する歩行特徴を高精度に定量化することができていなかった。
また、患者の歩行を観察することで症状を把握することがあるが、疾病の種類や重篤度合いによって多様な歩行特徴が存在するためデジタル化が難しく、現在は理学療法士が目視で行っていることが大半である。
そこで、株式会社富士通研究所と富士通株式会社は、疾病の影響によって多様に発生する患者の歩き方の特徴を定量化する、歩行特徴デジタル化技術「FUJITSU KIDUKU Walking Engine(キヅク ウォーキングエンジン)」を開発した。
同技術は、今回開発した歩行時の左右の足の動作の関係性や一歩ごとの動作の遷移の仕方などの動作法則に基づくモデルを活用し、ジャイロセンサーから発せられる信号波形に対し、特徴点をつけて意味づけを行う。
今回、市販のジャイロセンサーを用いて、9種類の歩行異常(小刻み歩行、ぶん回し歩行、すり足歩行など)を含む様々な歩き方を開発技術で評価した結果、歩行動作のみを判別する歩行区間の自動認識精度が96.5%、ストライド時間(スタンス時間とスイング時間の和)の抽出誤差が1.8%(歩行区間を手入力する従来の市販製品と比較し最大で約3分の1に誤差を削減)となり、複数の歩行特徴を算出できることを確認した。
これにより、歩行動作のみの信号を判別したうえで、踵が着地する時や爪先が地面から離れる時など、歩行時の動作の特徴点を歩き方の違いによらず認識可能にする。この特徴点を計測することで、歩幅やスイング時間などの歩き方の特徴を定量化できる。
また、筋骨格・脳神経・循環器などの様々な疾病の影響で現れる多様な歩き方の観察において、定量的な特徴把握を可能とし、回復過程の記録や遠隔モニタリングなど、業務効率化への貢献が期待される。
プレスリリース提供:富士通
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