IDC Japan株式会社は、国内IoT市場における産業分野別予測とユースケース別の事例考察を発表した。国内IoT市場におけるユーザー支出額について、2020年の実績(見込値)は6兆3,125億円であり、その後、2020年~2025年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)10.1%で成長し、2025年には10兆1,902億円に達するとIDCではみている。
産業分野別にIoT市場を見ると、2020年時点で個人消費者以外において支出額が多い産業分野は、組立製造、プロセス製造、官公庁、公共/公益、小売、運輸である。国内ではGDPに占める製造業の割合が大きく国策として製造業におけるIT/IoTの活用を推進している。
また、社会インフラの老朽化対策や交通システムの高度化施策の拡大、スマートグリッドに対する支出の急速な増加、サプライチェーンを跨ぐ形でのIoT活用の広がりなどが、これらの産業の支出額を押し上げている。
インダストリー分野のIoTだけでなく、個人消費者分野でのIoT支出額規模も堅調に成長する。同市場では特にスマートホーム(家電)、スマートホーム(オートメーション)といったユースケースが牽引することにより、予測期間を通じて、組立製造、プロセス製造に次ぐ市場規模を維持する。
さらに、農業フィールド監視、小売店舗内リコメンド、コネクテッドビル、院内クリニカルケア、スマートグリッド/メーター、テレマティクス保険なども高い成長が期待される。
企業は各IoTユースケースの枠組みの中で、IoTデータの活用を広げるべく、自社の資産/製品などのIoT化を進める過程で、データアナリティクス/AIソフトウェア、システムインテグレーション、ビジネスコンサルティングなどに対する投資を拡大させるとしている。
2番目の要因は、データに対する企業の認識の変化である。IoTデータやそれ以外の多様なデータを組み合わせて活用することの重要性が市場で認識されつつある。データを企業間/産業間で流通させるデータシェアリングやデータ取引の仕組みの充実、Data as a Serviceなどの新しいサービスモデルの考案、データの取り扱いに関する法規制の整備などが進んでいる。
企業が社内外のデータを複合的に活用したデジタルソリューションを構築すべく、そこで必要となるデータを取得するために新たにIoTの取り組みを開始することが考えられる。また、取得したデータの社外提供(販売)を主目的としてIoTの取り組みを進める企業も増加する可能性が高いとIDCは考えている。
IDC Japan コミュニケーションズのシニアマーケットアナリストである鳥巣悠太氏は「ネクストノーマルの時代においてIoTソリューションの在り方も大きく変化する。たとえば新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する失業率増加に対する対策や、柔軟な働き方を実現するための仕組みが求められる中、IoTを含めた多様な技術を通じ、人間の能力や人間の評価をあらゆる角度からデータ化し、企業横断で活用することで、従来と比較して圧倒的に柔軟なワークスタイルを確立し、また、これまでとは比較にならないほどの適材適所な人材リソースの配分を可能にする」と述べた。
続けて「ベンダーは、そうしたこれまでは難しかった領域におけるデータ化に向けた施策を、IoT技術の活用によって推進し、そこから生み出されるアイデアを最大化することで、ネクストノーマル時代におけるIoTビジネスの拡大に向けて取り組むべきである」と述べている。
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