IDC Japan株式会社は、2021年4月と8月において、全国の従業員規模100人以上の企業を対象に、「データ利活用統括者調査」と「IoT担当者調査」の2つの定量調査を実施しており、この調査結果に基づいた国内におけるDX推進企業のデータ利活用動向と、IoT推進企業の取り組み状況に関する調査結果を発表した。
「データ利活用統括者調査」では、データ利活用統括者が所属する企業を、「レベル3:全社的なDX実現に向けたデータ利活用」「レベル2:部分的なDX実現に向けたデータ利活用」「レベル1:データを通じた現状把握・予測などが中心」といった、データ利活用の成熟レベル別に分類し、課題の考察を行っている。
調査の結果データ利活用の課題としては、データサイエンス・エンジニアリングスキルの不足を懸念する傾向が強いことが分かった。(下図参照)

また、「組織の分断・データのサイロ化」、「経営層の意識の低さや将来に向けた見通しの甘さ」、「システムの過度な複雑化」、「データパイプライン内のプロセス間の無駄」などが課題として目立っている。
レベル3の企業では、すでに全社的にDX実現に向けたデータ利活用を進めていることから、「活用データの仕様・形式が不統一」「取り組みの負担が一部社員に集中」「KPIが未確立」といった実践的な課題が特徴的だ。
レベル2の企業では「組織の分断/サイロ化」や「データサイエンス・エンジニアリングスキル不足」などが目立っており、レベル1の企業では、「システムの過度な複雑化」や「データ活用プロセス間の無駄が多大」が顕著であり、経営層の「ビジョン・意識の欠如」の回答も多くなっている。
「IoT担当者調査」では、IoT担当者の所属企業のIoTの取り組みを、顧客サービス価値向上・新ビジネス創出を目的とした「DX用途」と、社内業務効率化・コスト削減を目的とした「社内用途」に分類すると、DX用途では新型コロナウイルス感染症により取り組みが「拡大した」と「一時的に中止した」の回答割合が後者よりも高いことが分かった。
つまりDX用途でIoTを推進する企業では、コロナを機に今後取り組みの進捗が二極化していく可能性が高いと考えられる。
また、同調査では、ローカル5Gの活用状況や活用意向に関する調査も行っており、それによると、IoT担当者の所属企業において、すでにローカル5Gを活用中の企業は全体の15%程度に達することが分かった。

一方で、ローカル5Gの「採用が未定」と回答した全体の約45%の企業に対して理由を調査した結果、「導入価値・ROIが不明確」という意見が多くを占めた。(トップ画参照)
これに関しては、ローカル5Gソリューションの提案に向け、IoTソリューションを提供するベンダーはベストプラクティスを顧客に積極的に公開することが重要だと考えられる。
IDC Japanのコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの鳥巣悠太氏は、「DX推進企業におけるデータ利活用の課題は、取り組みの成熟レベルによって多様化している。ITベンダーは企業のレベルに合わせたデータ利活用ソリューションの最適化、人材の登用・待遇の改善や組織変革に向けたコンサルティング、CxOのマインドセット転換に向けたアドバイザリーなどを推進すべきである」と述べている。
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