アクセンチュア株式会社は、世界のテクノロジートレンドに関する最新の調査レポート「Accenture Technology Vision 2022(以下、テクノロジービジョン2022)」を発表した。テクノロジービジョン2022では、デジタル化が進んだ社会や生活、ビジネスモデルの至るところにメタバースが遍在化することで、ビジネスや組織運営のあり方、顧客との繋がり方が再創造されつつあることを明らかにした。
今回のレポートでは「メタバースで会いましょう – ビジネスを再創造するテクノロジーと体験の融合(Meet Me in the Metaverse: The Continuum of Technology and Experience Reshaping Business)」と題し、拡張現実やブロックチェーン、デジタルツイン、エッジコンピューティングなどのテクノロジーによって、人々の体験のあり方が変わりつつある中、企業は従来の事業計画とは全く異なる未来に向かって競争を始めていることが紹介されている。
アクセンチュアのテクノロジー担当グループ・チーフ・エグゼクティブ 兼 最高技術責任者であるポール・ドーアティ氏は「メタバースという次世代インターネットの勃興により、かつてない規模でDXの流れが加速し、私たちの生活や働き方は大きく変化するでしょう」と述べた。
続けて「アクセンチュアでは、一般的な狭義のメタバースとは異なり、社会の至るところに遍在するテクノロジーとしてメタバースを捉えています。企業はいま行動を起こさなければ、他社が自らのために作り出したビジネス環境下での競争を強いられることになります」と述べている。
アクセンチュアは、テクノロジービジョン2022の作成にあたり、日本を含む35カ国、23の業種にわたる4,600人以上の企業経営層およびIT担当幹部を対象に調査を実施した。その結果、メタバースの黎明期である現段階において、調査対象者の71%が「メタバースは自社にポジティブなインパクトをもたらす」と回答し、42%が「メタバースは画期的もしくは革新的なものになる」と回答した。
アクセンチュアのデビッド・ドロガ氏は「アクセンチュアは、メタバースに関する600件の特許ならびに10年以上の経験を有しており、メタバースに関する先進的なサービスを提供しています。新設されたビジネスグループでは、こうしたメタバース領域のサービスとアクセンチュア インタラクティブが有するクリエイティブの力を組み合わせながら、イノベーション創出やクリエイティブに長けた人材が連携することで、メタバースが遍在する世の中における新たなアプリケーションを生み出してまいります」と述べた。
また、ポール・ドーアティ氏は「生活における現実(リアル)と仮想(バーチャル)の境がますます曖昧になる中、企業にとっては、メタバースに関する信頼性やサステナビリティ、個人の安全、プライバシー、責任あるアクセスや利用、多様性をはじめとした課題に対処しつつ、責任あるメタバースを構築することがチャンスであると同時に責務でもあります。今日の行動と選択が、未来の成長をもたらすことになります」と述べた。
テクノロジービジョン2022では、こうしたビジネス環境下において、企業が押さえるべき4つのテクノロジートレンドを定義した。
- WebMe ―― メタバースの中の「私」
- プログラム可能な世界 ―― 世の中をパーソナライズする
- アンリアル ―― 本物の世界を人工的に作る
- 不可能を可能にするコンピューティング ―― 新たなマシンが可能性を切り開く
企業は、現在のインターネット技術を踏まえて戦略を策定しているが、デジタル世界におけるプラットフォームの相互運用性やデータの可搬性は必ずしも十分ではない。しかし、メタバースやWeb3により、インターネットは形を変えつつある。メタバースは、さまざまなサイトやアプリの集合体ではなく、今後は歩いて部屋を移動することと同じくらい簡単に、ある場所から別の場所への移動を可能とする、一貫性のある三次元空間となる。
今回の調査では、企業経営層やIT担当幹部の95%が「将来のデジタルプラットフォームでは一貫した体験を提供し、異なるプラットフォームや空間における顧客データの相互運用を実現する必要がある」と回答した。
5G、アンビエントコンピューティング(環境に溶け込んだコンピュータ)、拡張現実、スマートマテリアル(知能材料)といった新興テクノロジーが進化するにつれ、デジタル環境は現実世界にますます編み込まれていく。
こうした環境では、人々が世の中と繋がる方法や内容が変わるだけでなく、人々の感覚や交流方法、およびそれらをコントロールする方法が一新される。今回の調査では、実に92%が「先進企業が仮想世界の垣根を取り払い現実に近づけることで、仮想世界と現実世界の一貫性に対するニーズは高まるだろう」と回答した。
企業や業界は、AIが生成する現実世界を反映したデータの利活用をより一層進めている。企業や消費者が、企業のコンテンツやアルゴリズム、ブランドそのものに関して、リアルかフェイクのどちらかではなく信頼のおける本物であるか否かを重視する中、AIの活用はこれまで以上に企業の最重要課題となっている。実在しないアンリアルな世界が現実となりつつある中、リーダー企業は今こそ準備を進める必要がある。今回の調査では、すでに96%が「データの出処や偽りのないAI活用の立証に取り組んでいる」と答えている。
新たなマシンの勃興により、さまざまな業界において、コンピュータによる解決能力の限界が広がりつつある。量子コンピューティングや生物学に基づくコンピューティングなどの手法により、従来のコンピューティングでは費用や効率性が全く見合わなかった困難な課題を企業が解決できるようになった。壮大な取り組みだったものがありふれた業務になるにつれ、競争や価値創出、協業のあり方は大きく変化する。
今回の調査では、94%が「難解に見える課題の解決に向けて次世代コンピューティングを活用することが長期的な成功を左右する」と答えた。
先見の明を持つ企業は、今日の市場における不確実性を対処しつつ、遍在するメタバースの中で競争を始めている。例えば、米食品会社のMars(マース)は、マイクロソフトやアクセンチュアと協力して、メタバースの基礎要素の一つであるデジタルツインを使い、廃棄物の削減、業務運用の迅速化や能力向上、サプライチェーン全体における従業員のリアルタイムな意思決定を可能にした。
マースは現在、こうした取り組みを製品開発にも拡大し、気候や災害などの変動要因を織り込んだデジタルシミュレーションにより、原産地から消費地に至るまでのさらなる可視化を図っているとのことだ。
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