現在、メタネーション(※)を含めたCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:CO₂を回収して燃料、化学品、建材などの製造・利用に活用すること)分野におけるCO₂のカウント方法について議論がなされており、カーボンリサイクル燃料の一つである合成メタン分野においても検討が進められている。
そうした中、大阪ガス株式会社、三菱重工業株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)の3社は、合成メタンの環境価値の可視化・最適化に向け、三菱重工と日本IBMが構築を進める二酸化炭素(以下、CO₂)流通を可視化するデジタルプラットフォーム「CO₂NNEX(コネックス)」を活用し、サプライチェーン全体における合成メタンのCO₂排出量観点における環境価値を可視化し、流通・移転を可能にするシステムの概念実証(PoC)を、共同で実施することに合意した。
また、PoCの実施に当たっては、一般社団法人日本ガス協会に加え、東京ガス株式会社、東邦ガス株式会社および株式会社INPEXとの意見交換も行う。
今回共同で実施するPoCは、合成メタンの製造から供給・利用に至るサプライチェーン全体のCO₂排出量を可視化することを目指した取り組みであり、この成果を活用することで、CCUのCO₂流通を可視化し、CO₂取引方法や環境価値の移転、合成メタン供給先でのカーボンフットプリントの試算などの活用に役立てることについて、具体化していくことを目的としている。
今回の取り組みでは、「CO₂NNEX」を活用し、合成メタンの原料となるCO₂と水素の由来情報や、合成メタンの製造、輸送、供給、利用時に発生するライフサイクルCO₂の排出量などを可視化し、証跡(証拠となる痕跡)として提供することで、合成メタンの環境価値の可視化を実現する共通プラットフォームを構築する。(トップ画参照)
複数事業者・地点における合成メタン製造、供給(輸送含む)および利用に関して、CO₂排出量をトラッキング・管理するための情報を証書化して定量的に示すことにより、合成メタンの環境価値の定量化を目指す。
また、合成メタンの環境価値移転といった将来的な取引の拡張性を組み込むことや、他社の合成メタン事業で使用可能な業界標準システムとして構築することも目指すとしている。
現在、合成メタンの製造・社会実装に向け、メタネーションに関するさまざまな実証事業が計画されており、大阪ガス、三菱重工、日本IBMの3社は、今後計画されているメタネーション実証に、今回のPoCで得られた成果を適用するとしている。
メタネーション:水素とCO₂から都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術で、製造されるメタンは合成メタンと呼ばれる。本来であれば大気中に放出されるCO₂を回収し、合成メタンの原料としてカーボンリサイクルするため、合成メタンを利用(燃焼)しても、社会全体のCO₂は実質的に増加しない。また、合成メタンは、都市ガス導管といった既存インフラ・既存設備を有効活用できることから、社会コストの抑制が可能であるため、効率的な脱炭素化手段として期待されている。
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