国内における食品ロス量は、2020年度時点で522万トンに上り、それを企業などが排出する事業系(275万トン)と消費者が排出する家庭系(247万トン)でおよそ半々ずつ分け合っていると推計されている。2015年度以降、食品ロス量は減少しているものの、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にはこれまで以上の削減が必要とされている。そうした中、企業に対する行政や株主、消費者からの要請は高まっており、企業での食品ロス削減への取り組みは年々活発化している。
一方、消費者に対する外部からの働きかけは、自主的な取り組みを促す啓発活動を主とせざるを得ず、家庭系の食品ロス削減はあまり進んでいないのが実態である。
家庭系の食品ロス削減を加速させるには、消費者が喜んで食品ロス削減に取り組みたくなるようなアプローチを取り入れることが不可欠である。そのため「もったいない」といった倫理観に訴えるばかりでなく、食生活や健康の改善など、消費者にインセンティブを感じられるサービスを提供し、そのサービスの利用によって同時に家庭系食品ロスも削減できるようにするといった方法の開発が求められている。
株式会社GIG、サッポロホールディングス株式会社、東芝テック株式会社、東芝データ株式会社、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)、フラー株式会社、株式会社ユニバースは、家族の食生活の改善および家庭系・事業系の食品ロスの削減を支援するスマートフォンアプリのサービスが、消費者にどの程度受け入れられ、効果を出せるのかを検証する実証実験を2023年1月17日~2023年2月17日まで、青森県、岩手県、秋田県の3県で実施する。
同実証実験では、参加するモニターの苦手食材データのほか、日々の食品の購入履歴データや食生活データなどを基に、食生活の改善を促す行動をスマートフォンアプリが提案し、モニターとその家族の食生活の改善に対する効果を検証する。また同時に、食材の使い切りや食べ切り、そして野菜の皮なども使った調理を促す提案や過剰在庫が発生した食材の購入の提案を行うことによる、食品ロスの削減効果について検証する。
具体的には、スマートフォンアプリ「うちれぴ」を通じて、食生活の改善および食品ロス削減の観点から購入する食材や食生活に対する提案を行い、モニターの実際の行動に対する効果を測定する。
うちれぴには、電子レシートサービス「スマートレシート」を介して、スーパーマーケット「ユニバース」での購入履歴が自動連携され、また、モニターも食生活データ(食事を食べ切った後の食卓の写真、など)を自ら登録していく。
蓄積された購入履歴と食生活データ、そして事前登録された苦手食材データを基に、うちれぴはモニターとその家族の食生活の改善と食品ロスの削減を促す行動(朝食を食べる、苦手食材を利用したレシピを作る、ご飯を残さず食べる、など)の提案である「クエスト」を提示する。また、店舗で発生する食品ロスを削減するために、過剰在庫が発生した食材の購入を提案するクエストも提示する。
クエストにはそれぞれ、食生活データの登録といった達成条件が設定されており、達成時には、クエストごとに設定されたポイント(ユニバースで利用できるRARAポイントに交換可能)が付与される。
同実証実験における各社の役割は以下の通り。
- サッポロホールディングス
- フラー
- GIG
- 東芝データ・東芝テック
- ユニバース
- 日本総研
うちれぴをベースとした消費者向けアプリケーションの構築、同実証実験の運用
うちれぴをベースとした消費者向けアプリケーションの構築支援
うちれぴをベースとした消費者向けアプリケーションの構築
スマートレシートの提供
同実証実験の実施場所の提供と運用
同実証実験の全体設計・推進・効果検証
なお、同実証実験は、経済産業省委託事業「令和4年度 流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したサプライチェーンの効率化及び食品ロス削減の事例創出)」に採択された。
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