IDC Japan株式会社は、国内通信サービスの市場予測を発表した。これによると、2022年の国内モバイル通信サービスのエンドユーザー支出額は6兆7,710億円、前年比成長率はマイナス1.4%となった。2027年の支出額は6兆8,500億円、2022年~2027年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は0.2%となる見通しである。
2022年のモバイル通信サービス市場は、個人セグメントにおける回線数の伸び悩みと、MNO(Mobile Network Operator)がメインブランドやサブブランドで導入した低価格な料金プランの浸透が影響し、全体支出額の減少が続いている。
その一方で、同市場に含まれる5G通信サービス市場および法人向けワイヤレスIoT市場の成長は堅調である。5G通信サービス市場は、MNOによる5Gサービスの提供開始から3年が経過し、5G対応端末への買い替えが順調に進展しており、2022年における5G回線数の前年比成長率は108.6%となった。IDCでは、全回線数に占める5G回線数の割合は2025年に50%を超えると予測している。
法人向けワイヤレスIoT通信サービス市場は、2022年における支出額の前年比成長率が5.2%となった。需要の多くは電力、水道、ガスなどのスマートメーターやコネクテッドカーといった多くの設置対象を有する大企業や組織が占めているが、中堅中小企業層におけるセンサーやカメラ、アセットトラッキングなどのロングテール領域の需要も市場拡大に寄与している。
法人向けWANサービス市場に目を向けると、イーサネット専用線とL3(レイヤー3)ベストエフォート型WANが他のサービス種別よりも高い成長を維持している。2022年における売上額の前年比成長率はイーサネット専用線が2.9%、L3ベストエフォート(ワイヤレスを除く)が1.7%となった。また、法人向けインターネット接続サービス市場も拡大している。2022年における支出額の前年比成長率は3.6%となった。
クラウドシフトやWeb会議の増加によるトラフィック増に対応するため、拠点でローカルブレイクアウトを実現する企業が引き続き増加している。こうした用途において、多くの企業は帯域確保型よりも安価なベストエフォート型のサービスを選択している。今後もベストエフォート型を中心に市場拡大が継続するとIDCではみている。
2027年までの国内通信サービス市場は、クラウドシフトや業務効率化、DXの進展などを背景に、IoT端末の増加とトラフィックの増大に対処するための回線需要が継続し、市場は堅調に成長すると予測している。
IDC Japan Infrastructure&Devicesのシニアマーケットアナリストである水上 貴博氏は「通信事業者はクラウドサービスへの旺盛な需要からさらなる成長が見込まれるデータセンター間接続に注力し、収益機会を掴むべきである。IoT通信サービスでは、高度な冗長化に対応したモバイル回線がアクセス回線の新たな選択肢となる」と述べた。
続けて「IoTソリューションを提供する事業者は、冗長化されたモバイル回線をソリューションに組み込み、ユーザーの信頼性への要件にモバイル回線の優位性を生かしつつ応えることによって、案件の獲得を目指すべきである」と述べている。
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