IDC Japan株式会社は、国内エッジインフラ市場予測2023年上半期版を発表した。これによると、2023年の国内エッジインフラ市場の支出額は、前年比12.1%増の1兆4,135億円であると推計している。また、2022年~2027年の5年間における年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は13.3%で、2027年の同支出額は、2兆3,549億円になるとIDCは予測している。
IDCでは、Worldwideおよび国内におけるエッジコンピューティングに資するITインフラ(エッジインフラ)市場の市場規模(IT支出額ベース)および、その市場予測データを、半年ごとに「IDC’s Worldwide Edge Spending Guide」として提供している。
エッジコンピューティングとは、「エッジ領域」におけるコンピュータ処理を総称している。IDCでは「エッジ領域」を、「コア領域(企業のデータセンターやパブリッククラウドなど、企業や組織におけるコンピュータ処理の中心的位置)」と、「エンドポイント(センサーやリモートデバイスなど、データ収集を行う場所)」間の、広大なスペースであると定義している。
同Spending Guideでは、ユーザー(ITバイヤー)が、エッジコンピューティングを実施する際に必要となるITインフラ関連支出を、「Hardware」「Software」「Service」の各Technology Groupに分類し、その市場規模(支出額)を算出している。
なお、エッジコンピューティングの実施によって得られたユーザー(ITバイヤー)の売上額は、推計の対象にしておらず、コア領域におけるITインフラ、およびエンドポイントに対する支出額も対象外としている。また、同プレスリリースは、2023年8月にリリースされたIDCのデータ製品「IDC’s Edge Spending Guide 2023V1, August, 2022」に基づいている。
2023年の国内エッジインフラ市場をTechnology Group別に見ると、支出額が最も大きいのはハードウェア市場であり、その支出額は前年比10.4%増の6,488億円、2027年の同支出額は、1兆277億円に拡大すると予測している。2022年~2027年のCAGRは11.7%を予測しており、予測期間を通じてエッジインフラ市場全体の5割弱を占める。
CAGRで見て、高い成長が期待できる市場は、サービス市場であり、その支出額は、前年比16.1%増の5,976億円、CAGRは17.0%と予測しており、2027年の同支出額は、1兆1,281億円になると予測している。
IDCでは、今後、エッジインフラにおいて、AI技術を利用した高度なデータ分析処理に対するニーズが高まるとみている。また、データ分析処理に使用されるデータとして、動画や静止画などの非構造化データが増加し、データの種類も豊富になってくることから、エッジコンピューティングのニーズが多様化し、それにともない、エッジインフラ市場は高成長すると予測している。
さらにIDCでは、エッジインフラ市場を「AI」「AR/VR(Augmented Reality/Virtual Reality:拡張現実/仮想現実)」「Drones」「IoT」「Robotics」および「Service Provider」の技術Domain(ドメイン)に分類し、市場予測を行っている。
2023年の国内エッジインフラ市場をドメイン別に見ると、支出額が最も大きいのはIoTドメインであり、その支出額は前年比13.7%増の6,362億円、2027年の同支出額は、1兆716億円になる予測している。
2022年~2027年のCAGRは、13.9%を予測しており、予測期間を通じてエッジインフラ市場全体の5割弱を占め、CAGRで見てもService ProviderやDronesの技術ドメイン次いで高い成長が期待できる市場となっている。なお、最も高い成長が期待できるService ProviderドメインのCAGRは24.1%と予測しており、2027年の同支出額は4,041億円になると予測している。
IDCが2022年に実施したユーザー調査では、企業や組織に属するビジネスパーソンや公務員など、調査対象者の8割強が、「エッジコンピューティング」という言葉を「聞いたことがない」「言葉は知っているが意味が分からない」とする回答結果が得られた。エッジコンピューティングは、企業や組織の現場におけるコンピュータ処理だが、現場で働く当事者の間で「エッジコンピューティング」の認知度が低いということは、その分、現場には多くのニーズが潜んでいるとIDCではみている。
IDC Japan Enterprise Infrastructure リサーチマネージャーの下河邊 雅行氏は「国内市場におけるエッジコンピューティングの認知度はかなり低い。エッジコンピューティングは、身の回りの課題をITで解決する手段として多くのユースケースがあるにもかかわらず、認知度が低いということは、裏返すと、その分、潜在的成長のポテンシャルを秘めているということになる」と述べている。
続けて「ITベンダーは、多くの顧客に潜んでいる、エッジコンピューティングニーズを顕在化させるためにも、クラウドのみならずエッジインフラビジネスにも注力し、クラウド-エッジ一体となったユースケースの提案を行い、最適なコンピューティング環境を提供していくことが重要である」と説明している。
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