2016年12月17日、今年も実用性や商品性の高いアイデアを表彰するMakersの登竜門、ハードウェアコンテストGUGEN2016が行われ、大賞、優秀賞ノミネート6作品のプレゼン及び審査発表が行われた。
・GUGEN2016とは
プリント基板のネット通販の最大手、P板.com(ピーバンドットコム)が主催の日本最大級のハードウエアコンテストであり、2009年に開催した「電子工作コンテスト」から数えて8年目となっている。新たな事業や産業を産み出していくための「ものづくり」をテーマに、実用性・商品性の高いハードウェアを募集し、「見て、聴いて、触って、楽しむことのできる体験型展示会」として開催され、専門家審査員のほか来場者からの評価をポイントとして受賞作品を選定するコンテストである。
GUGEN2016は一次審査として応募のあった152作品の中から64作品が展示会参加作品として選定され、さらにその中から展示会当日に審査員と来場者により受賞作品が選定された。
なお、審査基準は、以下の5つのになっている。
- ユーザーの役に立つモノか/金銭を出して購入したいアイデアか
- 製品として実現できるモノか
- 価格や素材など、現存する製品との違いがあるか
- 操作性、使い易さを考慮しつつ、形状・色・素材が素晴らしいモノか
- 製作者のスキル、熱意、思考から今後フォローしたいか
GUGEN2016大賞 「bioSync」 ~運動感覚を他者と同調する神経接続型デバイス

今回、GUGEN2016の大賞に選ばれたのは、身体接続技術に基づく新しいインタラクションを実現した「bioSync」だ。「bioSync」は他人の身体をハックすることができる。ハックすることでリハビリ支援・運動疾患理解の支援・スポーツ支援などが実現できるというものだ。
写真の肘部分にはマイコンとBluetooth通信が内蔵されており、手首に巻かれている電極を通し生体信号と筋電気刺激を計測し、もう一方の同様の装置を装着した相手に同じ動きを伝える。
リハビリ支援のシーンでは、医師が患者へ説明する際に言葉だけでは伝わりづらい場合が多いが、これを使うことで、患者の筋活動をハックし運動感覚とともに直感的に伝えることができるようになる。
また逆に、リハビリ中の患者であったりパーキンソン疾患の方の手の震えなど、患者の身体の運動感覚を医師が理解することで、より具体的なリハビリを支援することができたり、手が震えてしまうパーキンソン患者でも使いやすいスプーンの開発などを実際に行っている。
GUGEN2016優秀賞 その1 「OTON GLASS」 ~弱視者などの「読む行為」をサポートするスマートグラス

開発者は、自身の父親が失読症を患ったことをきっかけに、先天的に文字が読みづらいディスレクシア(Dyslexia)や弱視者向けに、視界に入っている文字を自動で読み上げ、読む行為をサポートするメガネ型ウェアラブルデバイスを開発した。
メガネの前方中心部には小型カメラが内蔵されており、有線でRaspberry Piに接続されている。小型カメラが目の前にある文字を認識し、カメラから取り込んだ画像をインターネット経由でGoogle APIに接続し、テキストデータ変換、音声合成を行い、デバイス側で音声を再生するしくみになっている。
また、来日した外国人が日本の看板や標識をみて、その国の言語へ翻訳するといった使い方も視野に開発を行っているとのことだ。
実用化となると、視線方向を認識し必要な情報だけを読み上げる機構などが必要になるなど、乗り越えなければいけない技術がまだまだ多いが、2018年内の実用化にむけて、実現の可能性と期待を込めて優秀賞に選ばれた。
GUGEN2016優秀賞 その2 「スワイプエプロン」 ~料理をしながらスマホを操作できるエプロン

スワイプエプロンは、アプリと連動してスマートフォンの画面をスワイプできるエプロンだ。
クックパッドなどのアプリでレシピを見ながら料理をつくる時、料理をしている手でスワイプすると画面が汚れてしまう、そんなイライラを解消するために開発したとのことだ。
エプロンの誘電布はユカイ工学のkonashiで制御されておりBluetoothでスマホと接続されているため、スマホを持たずにスワイプ操作をすることができる。そして汚れてしまったエプロンはもちろん洗濯することもできるように改良中だ。今後は工場や病院、化粧品売り場など様々なシーンでの活用を目指す。
また試作段階では、スワイプ以外のピンチイン/アウトも検討したが、操作性が良くなかったため現在のバージョンでは実装は行わなかった。
誰もが抱えたことのある身近な問題を簡単な仕組みで解決した点を称え、優秀賞が送られた。
GUGEN2016 GoodIdea賞 「Exo-Wheel」 ~アソベる 車いす型ノリモノ

本来身体が不自由な障がい者向けの製品である車椅子を、健常者向けにした逆転の発想が評価された。
日本の車椅子人口は100万人いるが、外出先で見かける回数は少ない。なぜなら車椅子にとってのバリアが多いからだ。そのバリアが少なくなる世界を実現するために、多くの車椅子ユーザーが増えればいいという願いから遊べる車椅子を誕生させた。
姿勢の傾きでの操作(姿勢センサー)や指さし操作(筋電センサー)、指先だけの操作(ジョイスティック)の 3タイプの操作方法があり、移動としてだけではなく、インラインホッケーやラクロスなど両手を使ったスポーツなど様々なシーンで活躍ができるようになっている。
このほか、加速度センサや温度センサをマイコンとパッケージして、荷物輸送時の衝撃や温度をロギングできる「Pack-logger」や、キューブ型のカエルを転がすことでドレミなどの音階を鳴らすことができるかわいらしい玩具楽器「コロガエル」が受賞には至らなかったがノミネート作品としてファイナルまで残った。
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1975年生まれ。株式会社アールジーン 取締役 / チーフコンサルタント。おサイフケータイの登場より数々のおサイフケータイのサービスの立ち上げに携わる。2005年に株式会社アールジーンを創業後は、AIを活用した医療関連サービス、BtoBtoC向け人工知能エンジン事業、事業会社のDXに関する事業立ち上げ支援やアドバイス、既存事業の業務プロセスを可視化、DXを支援するコンサルテーションを行っている。