2017年6月8日、ボッシュ株式会社は東京、渋谷にて年次報告記者会見を行った。
第三回目では、ボッシュのAIを活用したハウス栽培向け病害予測システム「Plantect」を紹介する。
ボッシュ 2017 年次記者会見 レポート:
ボッシュの2017年度戦略 ボッシュにおけるAIの研究開発と事業への活用 ボッシュのAIを活用したスマート農業向けのソリューション
ボッシュ株式会社 FUJIプロジェクト プロジェクトリーダーの鈴木 涼祐氏は、同社の農業向けソリューションについて発表を行った。
鈴木氏によると、ハウス農家では、収穫量や農作物の価格変動による従事者の不安定な収入が問題となっているそうだ。同社の調べによると、ハウス農家が抱えるハウス栽培における課題の第一位は「病害防除」だという。ある試験農家の実例では、過去に経験した病害による収穫損失量は70%にものぼる。
病害を予防するためには、感染の前後で予防薬を散布することが最も効果的だと考えられているが、病害が実際に発生するまで目に見えないため、散布の最適なタイミングを把握することは困難だった。また、農薬の散布量とタイミングを適切に管理するためにも、病害発生の兆候を把握することはとても重要だという。
ハウス栽培では、温度や湿度などの基本的なパラメータの他、日射量、栽培環境や外気象が病害発生に影響を及ぼす要因をAIにより解析することで病気予測を実現したのがPlantectだ。
Plantectは、ハウス内環境を計測するハードウェアと、計測された数値を基に病害発生を予測するソフトウェアで構成されているサービスだ。ハードウェアには、温度、湿度、日射量、二酸化炭素を計測するセンサーが備えらえており、ハウス内に設置すると、これらのデータが計測され、クラウドに送信されるという。
ユーザーは、スマートフォンやPCなどの各種デバイスからWebベースのアプリを通じでクラウド内のデータにアクセスすることができるため、いつでもどこでもリアルタイムでハウス内環境を確認したり、過去のデータを参照することが可能だ。
Plantectにはモニタリング機能に加え、病害の発生を予測する機能があるという。モニタリング機能でクラウドに送信されたデータは、ボッシュ独自のアルゴリズムにより、葉濡れなど病害発生に関わる要素が解析され、気象予報と連動し、植物病の感染リスクの通知をアプリ上に表示する。
Plantectでは100棟以上のハウスのデータとボッシュのAI技術を用いて、病害予測アルゴリズムを開発した。また、Plantectではこれまでの広域での注意喚起と異なり、各ユーザー向けにカスタマイズされた病害予測を可能にした。過去のデータの検証では、92%の予測精度を記録しているという。
一方で、Plantectの病害予測機能は、ハウス栽培のトマトに限られるが、今後イチゴ、きゅうり、観賞用の花など他の農産物への展開、また日本以外のハウス栽培市場で高い可能性をもつ国での販売を計画しているという。
Pantectは、センサーの情報をLoRAを通じて通信機に集約し、通信機からLTE回線を介してボッシュのクラウドデータベースに送られる。この際にかかる通信料はボッシュが負担する。LoRaの通信圏内であれば、複数のハウスのセンシングもできる。このセンサーの電源は市販のアルカリ電池で約1年稼働可能だ。配線が不要でハウス内に簡単に設置できるという。
このソリューションは、初期費用は発生せず、月額の使用料金のみでサービスを利用することができるということだ。サービスの月額使用料金は、ハウス内のモニタリングのみで4980円、病害予測はオプションで3350円となる。2017年8月からサービス提供を開始する。
この日本初のIoTソリューションは、今後世界各国でも展開を予定されているということだ。
最後にボッシュ株式会社 代表取締役のウド・ヴォルツ氏はPlantectについて「ボッシュは、センサーの世界的なサプライヤーであり、こうしたハードウェアの強みに加え、近年IoTソリューションのためのミドルウェアやクラウド運用を始め、IoTへの投資を大幅に加速してきた。Plantectは、IoTへの投資が事業拡大として表れた例であり、それが日本の若いスタータップの組織から生まれたことを大変誇りに思う」と述べた。
関連情報:Plantect(TM)
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