近年、小売業界では、人手不足による省人化と売上向上の両立が課題となっている。また、消費者の購買行動が多様化する中、購入履歴や行動ログなどのビッグデータを生かしたマーケティングやパーソナライズサービスへの機運が高まっている。こうした背景から、無人店舗のニーズは高まる一方、さらなる利用拡大に向けては、在庫管理や商品補充の最適化、売れ行きの把握、さらには消費者の購買行動や好みなどに基づいた新しい買い物体験の提供が求められている。
株式会社日立製作所(以下、日立)とグリコチャネルクリエイト株式会社は、グリコチャネルクリエイトのサービスである「オフィスグリコ」を活用し、小売DXを支援する無人店舗の実証を日立の事業所内で開始する。
同実証では、小型無人店舗のサービスコンセプト「CO-URIBA」のもと、生体認証による本人確認や自動決済、センサーを活用した購買行動ログの取得、デジタルサイネージなど日立グループのさまざまなテクノロジーを組み合わせることで、オフィスビルやテナントの空きスペースの有効活用、データ分析によるマーケティングなどにもつながる新しい売り場づくりの仕組みやサービスモデルの検討を進める。
CO-URIBAは、利用者が生体情報とクレジットカード情報をあらかじめ登録しておくことで、利用時に生体情報で本人認証を行い、商品を手に取り店舗エリアから離れるだけで自動精算が可能となる。商品棚と天井に設置したセンサーにより、ガムなどの小型・軽量の商品も認識可能であるほか、一度手に取った商品を棚に戻した場合でもキャンセルと判別することができる。
また、生体認証により、スマートフォンやクレジットカード、現金などを持たずに手ぶらで買い物できるほか、生体情報の悪用を防ぐ日立独自の技術「PBI」を活用しているため、セキュアに利用することができる。
CO-URIBAを活用することで、利用者の好みを収集して商品開発などのマーケティングに活用できるほか、購買状況をタイムリーに把握し、在庫管理の最適化や売れ筋商品の迅速な補充が可能となる。現場で確認することなく、どの商品がいつ売れているか、在庫状況はどれくらいかなどリアルタイムに状況を把握できるため、売り切れ前の商品補充、人気商品の売り場面積拡大など、ニーズに応じた販売計画の立案に役立て、売上向上に貢献する。
さらに、商品棚の重量センサーと商品棚上部の3Dセンサーから、利用者の行動履歴を収集し、購買データとともに複合的な分析をすることが可能となる。たとえば、購入者の属性や購入商品、時間帯などの情報に加え、商品前でしばらく足を止めた、一度手に取ったものの購入に至らなかったなどの行動履歴を多角的に取得できる。これにより、消費行動を詳細に可視化し、商品開発や販売戦略立案などマーケティングに活用することが期待できる。
日立は今後、売上向上につながるマーケティング機能をさらに強化するとしている。例えば、映像コンテンツをタイムリーに配信できる日立のデジタルサイネージ技術「MediaSpace」を活用し、入場時の認証情報をもとにしたパーソナライズ広告、手に取った商品に応じた広告やカロリーなどの関連情報、または施設のお知らせや天気予報といった情報をリアルタイムに表示するリコメンド機能、さらに日立の「IoT決済プラットフォームサービス」を活用したダイナミックプライシング(需要に応じた価格変動)機能の実装などを検討するとのこと。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。