我々にとって身近なコンビニ。
特集「コンビニとデジタル」では、コンビニにおけるデジタル化の現状や、本当に必要とされているデジタル技術とは何なのかなどについて、マーケティング・流通ジャーナリストの渡辺広明氏とIoTNEWS代表の小泉耕二が対談してきた。
今回は特集「コンビニとデジタル」の第二弾。(コンビニとデジタルの⑤〜⑧)
2022年11月28日に東京都大塚にオープンし、アバター接客や食品ロス削減など、サステナブルな施策に取り組んでいる「green Lawson(グリーンローソン)」に小泉が実際に足を運び、そこから見えてくる未来のコンビニについて、渡辺氏と対談した。
渡辺広明氏は、ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザーなどを務めた後、ポーラオルビル・TBCを経て2019年にやらまいかマーケティングを設立。現在は商品開発、営業、マーケティング、顧問、コンサルティング業務などで幅広く活動。フジテレビのニュース番組「FNN Live News α」でレギュラーコメンテーターも務める。
未来のコンビニでは「接客」の在り方が変わる
小泉: 「green Lawson」では、様々な施策が実施されていますが、渡辺さんの中ではどこに「未来感」を感じたのでしょうか。
渡辺: まず驚いたのが、「green Lawson」での会計はセルフレジで行われるため、基本的に接客をしないという点です。
代わりに、売り場やサービスカウンターで利用者の買い物をサポートする「おもてなしクルー」と呼ばれるスタッフが店舗にいます。
コンビニの場合、基本的には接客をしてほしくない人の方が多いのですが、シニアの方を中心に2〜3割は接客してほしい人もいます。そこでおもてなしクルーに話しかけると、従来のコンビニよりも親切な接客をしてもらえるのです。
小泉: 私が行ったときにもおもてなしクルーの方がいて、陳列棚を整理する作業をしていましたが、レジで困っている人を見つけるとすぐにサポートに回っていました。
また、レジ横には、遠隔から人がリモートで接客をする「アバター接客」も導入されていて、レジの操作方法を教えてくれます。
レジの横にディスプレイが設置されていて、制服を着たアバターが映し出されています。
ディスプレイにはカメラがついていて、遠隔のオペレータの人が勤務しています。実際に、私がレジに近づくと「こんにちは」などと話しかけてくれ、手を振ってくれました。
渡辺: ローソンのレジは他のコンビニと比べても複雑なので、セルフレジ導入のハードルが高かったのですが、操作方法を教えてくれるアバター接客をセットにすることでその壁を超えています。
また、無人店舗には万引きのリスクもあるため、アバターをたくさん設置して声がけをすることで、著しく減らすことができます。
小泉: 確かにアバターの前を通り過ぎるだけでも「いらっしゃいませ」などの声がけをしてくれるので、万引きをしようとしている人は見られている感じがしてできないと思いました。
渡辺: 万引き防止にはカメラを設置するだけでも効果がありますが、実際に人が声掛けしてくれるアバターであればさらに効果が増すと思います。
また、各家庭で余っている食品を寄付するフードドライブという場所があるのですが、その近くにもアバターが設置されています。
寄付されている食品なので、私が持ち帰ってもいいかアバターに聞いたのですが、施設などに寄付されるものだから持ち帰ってはダメだと注意されました(笑)
小泉: 監視したい場所にアバターが設置されているのですね。「green Lawson」に行ってみて、アバターがすごく役に立っているなと感じました。
一人のスタッフが掛け持ちして働けるアバター接客の利点
渡辺: 他にもアバター接客の利点はあります。
コンビニには3000品の品ぞろえがあって、100品の新商品が毎週入れ替わっています。つまり、一人のスタッフが全部の新商品を覚えるのはほぼ不可能です。そこで、例えばデザートのことに詳しいスタッフが遠隔で何店舗か掛け持ちをして接客するということが、アバター接客では可能になります。
実際「green Lawson」でもデザートケースの上にアバターが設置されていて、デザートの説明をしてくれます。
小泉: 私が行った際にも、アバターの声が途中で変わっていたので、交代しながら働くこともできるのだと感心しました。
こうしたアバターによるセルフレジに関するサポートや商品説明は、スーパーマーケットでも活用できると感じました。
スーパーマーケットは最近セルフレジが進んでいますが、セルフレジ周りをケアするスタッフがいないために、セルフレジコーナー全てを利用することができないということが起きています。
ここにアバターを導入すれば、セルフレジスペースのさらなる省人化を図ることができると思いました。
渡辺: さらに、アバターはインバウンドにも対応することができます。コンビニごとに他言語対応できる人材を配置することは難しいですが、必要な時に言語対応できる遠隔のスタッフがアバターで対応すればいいのです。
雇用されている場所や働いている場所は日本である必要もないため、接客の幅やサービスできる幅が広がります。(第7回に続く)
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