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決済の進化が未来のコンビニをつくる ―渡辺広明氏に聞く、コンビニとデジタル⑧

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我々にとって身近なコンビニ。 特集「コンビニとデジタル」では、コンビニにおけるデジタル化の現状や、本当に必要とされているデジタル技術とは何なのかなどについて、マーケティング・流通ジャーナリストの渡辺広明氏とIoTNEWS代表の小泉耕二が対談してきた。 今回は特集「コンビニとデジタル」の第二弾。(コンビニとデジタルの⑤〜⑧)

2022年11月28日に東京都大塚にオープンし、アバター接客や食品ロス削減など、サステナブルな施策に取り組んでいる「green Lawson(グリーンローソン)」に小泉が実際に足を運び、そこから見えてくる未来のコンビニについて、渡辺氏と対談した。

渡辺広明氏は、ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザーなどを務めた後、ポーラオルビル・TBCを経て2019年にやらまいかマーケティングを設立。現在は商品開発、営業、マーケティング、顧問、コンサルティング業務などで幅広く活動。フジテレビのニュース番組「FNN Live News α」でレギュラーコメンテーターも務める。

加速するレジや決済の改革

小泉: 次は、「green Lawson」のレジや決済に関する進化についてお話ししたいと思います。

大きな変化の一つは、セルフレジであるにも関わらず、酒類やたばこが買えるようになったことです。 これまで酒類やたばこの販売に関しては、店員による年齢確認が義務づけられていたため、セルフレジや無人店舗では販売するのが難しい状況でした。

しかし、2023年1月31日に一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会より、「デジタル技術を活用した酒類・たばこ年齢確認ガイドライン」が発表され、マイナンバーカードや運転免許証などの証明書を読み取れるセルフレジを活用するなどして、販売が可能となりましたね。

渡辺: そうですね。政府の意向としてもガイドラインの内容を認めたため、一気にセルフレジが浸透すると考えています。

これまでセルフレジが浸透しなかった一つの大きな理由は、酒類とたばこが販売できなかったからです。コンビニの売り上げは、3分の1が酒やたばこです。3分の1の売り上げがない上に新たにセルフレジを導入するのはハードルが高かったのですが、今回正式に販売することができるようになったため、一気にセルフレジが浸透するでしょう。

小泉: 前回渡辺さんにインタビューさせていただいてからまだ1年経っていませんが、その時から比べてもレジ周りの改革はかなり進んでいる印象です。

前回のインタビューでは、POSとその周辺のサービスが進化していくだろうというお話でした。

例えば、たばこを買うサービス、お酒を買うサービス、薬をもらうサービスと、個別のサービスに対してレジのスタッフが複雑な処理をしてこなしていました。そのため、レジを覚えるのはすごく大変で、レジ操作を覚えた人が辞められるのは困ることだとおっしゃっていましたよね。

しかしセルフレジが浸透することで、操作方法をサポートするおもてなしクルーが必要だとしても、基本的には利用者が全てこなせる仕様になっています。

渡辺: 現時点ではおもてなしクルーがサポートすることでサービスを成り立たせていますが、最終的な未来のコンビニの形は、利用者が全てをこなせるサービスだと思っています。

ですから、今後も利用者がこなせる簡潔な方法はないかと模索され、コンビニはさらに進化していくと思います。

小泉: 確かにまだまだ簡潔にしていく余地はありそうですよね。例えばチケット販売などを行うマルチメディアステーションである「Loppi(ロッピー)」とレジはバラバラでした。今後は統合されていくのかもしれませんね。

決済の進化が未来のコンビニをつくる ―渡辺広明氏に聞く、コンビニとデジタル⑧
Loppiとセルフレジはバラバラの端末で設置されている。

渡辺: 統合されていくか、単純にLoppiがなくなる可能性もあります。

チケットの販売であればすでにスマートフォンでも行えるので、顧客視点で考えるとLoppiは必要ないとも言えます。 セブンイレブンでは、チケットの購入はマルチコピー機で行えるようになっているので、レジと統合されるのではなく、コピー機と統合されるかもしれません。

小泉: そういう意味では、これまでのコンビニには様々な什器がありましたが、「お金を払う」という行為は、複合機意外は基本レジでした。

しかし「green Lawson」では、セルフレジ意外にも、スマホ決済が利用できるため、お店の中であればどこでも決済ができます。

決済の進化が未来のコンビニをつくる ―渡辺広明氏に聞く、コンビニとデジタル⑧
スマホ決済の利用方法が書かれている。

つまり、お金を払う場所が1ヶ所ではなくなってきています。

これまでのコンビニでは当たり前だった、お店を回遊して、最後にレジに行き、レジ袋に入れてお店から出るという行動は、未来のコンビニではなくなるかもしれませんね。

渡辺: そうですね。今後は人件費も上がって行きますし、福利厚生も整えなければならないとなると、コンビニという業態が成り立ちませんので、なるべく省人化して機械に置き換わっていきます。

一方、親切に接客してくれるおもてなしクルーのような、人がやるべきことは残ります。このレベルがすごく大切になり、効率化と接客の両輪になっていくと思います。

ただ、スマホ決済に関しては、浸透するまでに時間がかかると感じました。商品棚の前で決済をして、そのままカバンに入れてお店を出るわけですから、最初は抵抗があります。

小泉: スマートフォンでバーコードを読み取るという方法が馴染まなければ、別の方法に移り変わる可能性もありますね。

渡辺: そうですね。慣れの問題もあると思うので、今回実験的に導入してみて、どんな反応が起こるかを試している段階だと思います。

未来のコンビニに期待すること

小泉: 特集「コンビニとデジタル」の第二弾では、「green Lawson」を通して、未来のコンビニについて話してきました。

個々の施策内容に加え、「green Lawson」は様々な施策の実験の場も担っているということで、非常に面白い取り組みだなと感じました。 渡辺さんから見て、「green Lawson」を見た後でのコンビニの未来は、どのようになっていくと思われますか。

渡辺: これ以上先が思いつかないくらい、「green Lawson」が未来のコンビニの正解に近いことをたくさん実施していると思っています。

ひとつあるとすると、セルフコーヒーの機械は、自動販売機のようにお金を入れればドリンクが出てくるようになれば、さらに便利になると思いました。

ドリンクディスペンサーのように、カップを置けばドリンクが出てくる仕様にすれば、マイカップの利用も促進でき、ドリンクコーナーだけで購入から持ち帰るところまでを完結することができます。

小泉: そういったディスペンサー方式であれば、デジタル化もしやすそうな感じがします。 さらにエンタメ性があるといいですよね。アメリカだと、ヨーグルトディスペンサーがあって、カップをもらったら好きにヨーグルトにトッピングすることができる方式を取っています。

渡辺: 「未来」という切り口ではゲーム的な発想が生まれにくいですが、自販機では昔から当たりが出る機能がありますし、エンタメ性を持たせると買い物がより楽しくなって良いなと思います。

小泉: 脱プラに関しても、大変な思いをして実施しているというイメーイではなく、ゲーム的な要素で楽しみながら行えると浸透する速度は早くなると思います。

渡辺: おっしゃる通りです。

ローソンでは、コーヒーに関してはマイボトルを持ってくと割引してくれる施策を取っていますが、そうした工夫が脱プラを促進させると思います。

また、未来のコンビニを実現するためには、利用者の理解も絶対的に不可欠です。何か問題が起こってしまうと、体制自体を変えなければならなくなってしまうので、お店側は楽しめる施策を打ち、利用者は楽しみながら協力していく必要があります。

小泉: 試行錯誤しながら、その時代に合ったサービスが生まれていくのですね。

「green Lawson」に行ったことがない人は、是非1度体験してみて、未来のコンビニを感じてみてほしいです。本日は貴重なお話をありがとうございました。(終わり)

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