ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは

株式会社ロイヤリティ マーケティングは、共通ポイント「Ponta(ポンタ)」の会員基盤を通じて得られるデータを生かした、デジタルマーケティングの事例を紹介するメディアセミナーを、2023年5月18日に開催した。

本稿では、セミナーで紹介されたサービスの概要やロイヤリティ マーケティングの強み、今後の展望などについて紹介する。

Pontaを活用したマーケティング事業の概要

まず、デジタルマーケティングやデータマーケティングの課題について、株式会社ロイヤリティマーケティング プロダクト統括グループ データイノベーション本部 本部長 小河貴裕氏より、説明があった。

インターネット上のユーザの行動履歴をトラッキングできるサードパーティクッキーは、リターゲティング広告やアトリビューション分析などに活用されてきたが、個人情報保護の観点から規制する流れが生まれている。

また、2022年4月には改正個人情報保護法が施行されており、クッキーレスの動きが加速している。

そうした中、ロイヤリティ マーケティングでは、個人を特定しないファーストパーティデータを活用したマーケティングを推進しているのだという。

具体的には、2010年よりサービス開始している、共通ポイント「Ponta」のファーストパーティデータを活用している。

小河氏は、「Pontaはもともとリアル店舗から広がっていった共通ポイントプログラムであることが特徴であり、偏りなく消費者の行動を捉えたデータを蓄積している。」と、顧客との接点について述べた。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
2010年のサービス開始時は、リアル店舗から導入が始まり、ネットワークサービス、インフラ、キャッシュレスへとネットワークを拡大してきた。

Pontaカードには一枚づづIDが紐つけられており、カード所有者の基本属性やPontaカード利用履歴、ライフスタイルデータなどが蓄積されている。

これらのPontaデータは、「広告・集客(プロモーション)」「アンケート調査(リサーチ)」「データ分析・コンサル(アナリティクス)」といったマーケティングサービスに変換して企業に提供されている。

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Pontaデータのマーケティング事業

例えば「広告・集客(プロモーション)」では、自社のオウンドメディアであるPontaアプリやPonta会員向けメールのターゲティング配信を行う際にPontaデータを活用したり、PontaデータとGoogleやLINEなどのプラットフォーマーのデータを連携させた上で分析して、広告配信をしたりといったマーケティングサービスに変換されている。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
Pontaデータを、マーケティングサービスに変換している。

なお、Pontaカードのデータは、個人情報保護法をはじめとした関連規則に則った上で、クライアントに応じて必要なデータが抽出され、分析を行った上で活用されているのだという。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
クライアントのニーズに応じて、データを抽出・分析している。

デジタル広告接触から実際の購買までのデータを分断させない「Ponta Ads」

次に、デジタル広告の効果を分析するマーケティングサービス「Ponta Ads」についての紹介があった。

通常、デジタル広告を実施してリアル購買を促すといった、デジタルとリアルをまたぐプロモーションを行なっている場合、両方のデータは統合されていないため、正確な成果を図ることは難しい。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
リアル購買や行動を促すためのデジタル広告であったとしても、通常データは分断されてしまう。

望ましい姿としては、デジタル広告に接触したユーザが実際に購買したというデータが取れ、その結果ターゲティングや購買測定が行えるかたちだ。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
リアル購買や行動を促すためのデジタル広告の理想系

上記の望ましい姿を実現するのが、Ponta Adsなのだと小河氏は言う。

Ponta Adsでは、実購買のデータからターゲティングを行い、そのターゲットに対してLINEやInstagramなどのプラットフォームから広告を配信することができる。

また、広告に接触した方が、対象の店舗行ったか、商品を購買したか、といったことも測定することができる。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
Ponta Adsを活用することで、デジタルとリアルのデータをシームレスに連携することができる。

小河氏は、実購買データを活用した広告配信は他社サービスでも事例があるとした上で、Ponta Adsの差別化となる強みについて、「データボリューム」「メディアへの接続環境構築」「接続ボリューム」を挙げた。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
Ponta Adsの強みを表した図

Ponta Adsでは、多数かつ他業種の企業と提携することで得た、大規模かつ多彩なデータを、クッキーやIDFA (Identifier for Advertisers)に依存せずにメディアと突合している。

これにより、適切なターゲティングや購買測定が行えるのだという。(上図①②)

3つ目の強みであるメディアへの接続環境構築では、配信の分析を行う環境を構築している。

具体的には、分析専用環境データクリーンルームを各メディアと構築することで、メディアのデータも活用することが可能になっている。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
Googleの広告配信サービスGoogle Adsと、Ponta AdsをデータをGoogle環境内のデータクリーンルームで連携させ、分析している。

「Ponta Ads」を活用した事例

次に、Ponta Adsの事例として、食品メーカの事例が挙げられた。

この事例では、食品メーカの商品Aに対する広告配信を行う際に、Ponta提携社のID-POS情報から得られる購買データを活用している。

具体的には、過去の購買データから、「商品Aと同一カテゴリー商品の購入者」「商品Aと一緒によく買われるカテゴリー商品の購入者」「商品Aの購入者」にセグメントをわけ、それぞれのターゲットにインスタグラムで商品Aの広告を配信した。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
ターゲティングと購買測定を実施した食品メーカの事例

その結果、「購買データなし」に対する広告配信の購買効果を1とした場合、購買データからセグメントを行った3つのターゲットの費用対効果は、3倍〜10倍という結果になったのだという。

なお、測定指標は、広告接触者のリアル店舗の購入した金額割る、広告配信の金額で示されている。

高度な分析:ケース1

しかしこれでは、デジタル広告を見たから購買に至ったのか、もともと買う予定だったのかを判断するのは難しい。

そこで、広告配信対象者と同じリストの中から、あえて広告配信をしない非接触群を用意し、接触群と非接触群の差分を広告効果とする手法を実施した。

ターゲットは、過去の購買状況から、「既存」「休眠」「新規」という3つのセグメントに分け、それぞれのセグメントに広告接触群と非接触群をあえてつくって比較した。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
「既存」「休眠」「新規」という3つのセグメントに対し、広告非接触群を意図的につくり比較している。

その結果、「新規」セグメントが、購買率の絶対値は低いものの、広告効果の上昇率が高いことがわかった。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
広告接触群と非接触者群の分析の結果、接触者の購買率絶対値は「既存」が高いが、購買率リフト率は「新規」が高くなっている。

これに対し小河氏は、「広告接触群と非接触群を分けずに測定していれば、既存顧客へリーチできたという結果しか見えてこなかったが、新規に対しての広告効果が出たという結果も得ることができた。」と、ターゲティングの際の新たな指標を見つけられたのだと述べた。

高度な分析:ケース2

さらに、実施した広告のセグメント自体を検証する分析も実施された。

通常、広告効果の検証は、配信後に配信セグメントごとに分析するのが一般的だ。

しかしこれでは、広告効果の検証を行うことができても、セグメントが良い分け方だったのかの評価を行うことはできない。

そこで、広告配信後に、セグメントに捉われない自由なグルーピングで分析をした。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
ターゲットA〜Dに対して、配信セグメントごとに分析するのではなく、自由なグルーピングで分析をするという検証

検証方法はケース1と同様、「既存」「休眠」「新規」という3つのセグメントに対し、本の広告配信をGoogle Adsにて実施した。

そして、リアルな書店で購買された結果から、最初に設定したセグメントに捉われない様々なグルーピングでの分析を行った結果、「電子書籍購買層のほうが非購買層よりも購買率が高い」「習い事に興味関心がある人の購買率が高い」という結果が出たのだという。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
ケース1と同様のキャンペーンの結果を、自由なグルーピングで分析した結果、購買効果の高かったセグメントが導き出された。%は、広告接触者のリアルな書店での購買率を示している。

小河氏は、「ターゲットが明確に決まっていないケースにおいても、この手法であれば、後からセグメントを見つけ出すことができる。」と述べた。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
一般的な広告配信フローと、配信後に自由なグルーピングで分析する「逆引き分析」を比較した図

消費者のタイミングを逃さない「ADmoment DM」

次に、2023年1月にリリースされた「ADmoment DM」が紹介された。

ADmoment DMは、Ponta会員の意識が高まった瞬間(モーメント)を捉え、そのモーメントから最短3日で郵送DMを発送するサービスだ。

例えば、「特定の商品の購入」「ライフステージの変化」「誕生日」などのモーメントを捉え、DMを送るというものだ。

DMは一通単位で送ることができ、消費者のタイミングを逃さない施策となっている。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
「ADmoment DM」のサービス概要図

ADmoment DMの事例として、金融機関のカードローンの申し込み施策が挙げられた。

この事例では、メールで商品の興味度合いを測るアンケートを実施し、回答者の中から興味のあるユーザにDMを送付するという施策に対し、通常通りアンケート回答から1ヶ月後にDM送付を送付するのと、3日後にDM送付したユーザを比較。その結果、3日後にDMを送付したほうが、新規申し込み率が1.7倍増えた。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
カードローン申し込み施策の事例。「ADmoment DM」を活用した結果、新規申込率が1.7倍となった。

将来的には、郵送のDMだけでなく、メールやデジタル広告に関しても、同様の手法でアプローチしていきたいのだという。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
「ADmoment DM」を、DM以外にも拡張していく計画

データ取得と活用、量軸を拡充して新たなサービスを展開する

今後の展望に関して小河氏は、「タッチポイントやデータをさらに拡充し、消費者の色々な生活シーンを捉えられるようにしていきたい」のだとした。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
今後の展望を表した図

例えば、IoT家電の利用データとPontaの購買データ活用では、両データのIDを突合させ、エアコンの利用とソフトドリンクの購買の関係性を分析した。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
IoT家電の利用データとPontaの購買データの掛け合わせを表した図

なお、この分析結果は、2022年10月1日~31日に開催された「CEATEC2022」にて、株式会社電通の前川氏より発表されている。

また、今後はPonta提携社以外にもマーケティング支援を行くのだという。

Pontaに加盟している提携社の場合、基本的には提携社の購買データとPontaデータは一体化しているため、ロイヤリティ マーケティングはデータマーケティングの支援を行うことができる。

しかし、Ponta提携社になるためには、システムやオペレーションを整備する必要がある。

そこで、既に企業が持っている会員データや購買データを活用しながら、データマーケティングの支援を行っていくというものだ。

ロイヤリティ マーケティング、Pontaから得るリアルとデジタルを横断した購買データ活用の価値とは
提携社意外へのマーケティング支援のイメージ

具体的には、クライアントから会員データやサービス利用及び購買データを預かり、ロイヤリティ マーケティングが専用のデータベースを構築する。

このデータベースに蓄積されたデータの分析をしたり、外部メディアと連携をして広告配信をしたりといった支援を行う。また、必要に応じてPonta会員データとの名寄せやデータ保管も行う。

さらに、こうしたデータ分析や広告配信ノウハウを、第三者企業向けのサービスとして提供していくことも計画されている。

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