株式会社ヘッドウォータースとソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)、AWL株式会社は、株式会社ローソンの店舗におけるAI活用による個店最適化への貢献をめざし、エッジAI技術搭載デバイスなどを活用した店舗運営支援のための実証実験を、2023年3月から8月まで東京都・神奈川県内の7店舗で実施した。
今回の実証実験では、エッジAI技術ならびにマイクロソフトのMicrosoft Azureを用いることで商品棚の状況を効率的に自動検知し可視化したほか、顧客の店内動線や滞留時間などの行動データをAI技術により解析し、これらのデータを店舗施策の改善に活用するためのプロセス構築に取り組んだ。
具体的には、店舗内にAI処理可能なSSS製インテリジェントビジョンセンサー搭載のエッジデバイスを数十台設置し、頻繁に変更される商品レイアウトや棚のセクション(棚割り)、在庫状況を自動検知することを可能にした。これにより、従来店舗従業員が棚や商品の確認に要していた作業工数を減らすほか、エッジデバイスからシステムとクラウドに伝送するデータ量を削減し、システム全体のコストを抑えることに貢献した。
また、店内に設置したNVIDIA Jetson AGX Orinベースのカメラシステムを通じ、顧客の店内動線やエリアごとの滞在時間、商品を手に取る行動などを検知し、商品棚の状況に関するデータと併せることで、総合的な顧客行動の分析を行った。さらに、これらの顧客行動データを販売促進のための実施施策や購買率と掛け合わせ、行動・施策・購買率の相関関係を可視化した。
同実証実験においてヘッドウォータースは、プライムベンダとして「棚状況の検知」と「顧客の行動分析」のデータを統合し、分析するシステムをAzureで構築した。具体的には、各データを蓄積するCosmos DBやApp Serviceを使ったタブレットアプリ開発、棚前の滞留率や通過率など各データ可視化を行うPowerBIを提供した。
エッジAIに関しては、NVIDIA Jetsonシリーズに対応したエッジAIデバイスのモニタリング、新機能やセキュリティのアップデートを遠隔操作するための管理ソリューション「SyncLect Edge AI DMS」によって、対象7店舗に設置したエッジAIデバイスの一元管理、およびFOTA(※)を遠隔操作で対応した。
また、Azure MLによるXGBoost、RandomForest、LinearRegressionなどのアンサンブルによる推論モデルに加えて弊社独自に実装した因果推論モデルを組み合わせた施策効果の予測モデルを作成した。さらに、売上向上を目的に陳列状態と購買率の相関分析を行い、POPの設置やキャンペーン、集合陳列を提案するAIを構築した。
SSSは、AI処理機能を有するインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」の提供、および効率的なデバイス管理やAI開発・運用のために、Microsoft Azure上で構築されたクラウド環境「AITRIOS」を提供した。
そしてAWLは、IMX500搭載エッジデバイスにて動作する商品棚用の商品検出AIモデル、棚セクション・商品・商品陳列状態識別の各AIモデル、及びそのソリューションを開発した。また、Jetson AGX Orin搭載デバイスにて動作する、複数台のカメラを跨ぐ顧客の店内導線、商品接触、エリア滞在分析のためのAIモデル、及びソリューションの開発を行った。
※ FOTA(Firmware Over-the-Air):モバイル端末やIoTデバイスなどのファームウェアを、無線通信によって遠隔で更新する技術。通常、デバイスに新しい機能やセキュリティのアップデートを提供するために使用される。
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