近年、移動時間や手間がなく自宅で利用できる、美容や化粧品のカウンセリングを受けられるオンラインカウンセリングサービスが増えてきている。株式会社コーセーの調査によれば、オンラインカウンセリングを受けた人の約9割が美容への興味を増やし、約7割が購入検討や店舗訪問を行い、約3割が商品を購入したという結果も見られた。
しかし、オンラインでは画面越しのコミュニケーションとなるため、顧客の変化を察知する情報が少なく、顧客に寄り添ったカウンセリングが難しくなる課題も存在する。
そこでコーセーは、関西大学 総合情報学部 瀬島 吉裕 教授との共同研究により、化粧品のオンラインカウンセリングにおいて顧客の気分を推定する数理モデル(気分推定モデル)を開発した。
この技術は、オンラインカウンセリングの音声から顧客の気分の高まりや落ち込みをリアルタイムで察知できるものだ。これを応用することで、より一人ひとりに寄り添ったカウンセリングサービスの提供が期待されている。
共同研究者である瀬島教授は、これまでにオンラインコミュニケーションでの気分の盛り上がりを推定する数理モデルを開発してきたが、このモデルは対等な2人のコミュニケーションを前提としていた。そのため、カウンセリングのような役割が異なる二人のコミュニケーションには適用が難しかった。
そこで今回の研究では、実際にコーセーで行っているオンラインカウンセリングの様子を解析し、このモデルの再設計を行った。
新たなモデルは、顧客と美容部員の気分や対話の中で生まれる目に見えない場の雰囲気を仮想的な温度空間として表し、対話のやり取りが熱の出入りに対応してそれぞれの温度が変化する。
そして、接客を行う側、受ける側という役割が異なるのに合わせた熱の流れになるように工夫し、オンラインカウンセリングに対応した気分推定モデルを開発した。
このモデルを用いることで、カウンセリング中の美容部員と顧客の音声に関する情報から、顧客の気分を推定する。
開発した気分推定モデルが実際に顧客の気分を推定できているかを検証した結果、開発したモデルによって推定した気分の変動と、本人の主観による気分の変動は高い一致度を示した。
両者は、「この技術は音声を用いた気分推定モデルであるため、オンラインだけでなくあらゆる接客現場で活用できる可能性がある」としている。
なお、この研究成果の一部は、2024年11月18日~20日に兵庫県で開催される「第2回日本化粧品技術者会(SCCJ)学術大会」で発表される予定だ。
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