労働力不足の解決手段として、組立業や倉庫業、食品工場をはじめ、作業内容が週・日単位で頻繁に変更になる現場においてもロボット導入の検討が増えている。ロボットに作業をさせるため、一般的には専門家によるロボット動作のティーチングが手動で行われている。ティーチング作業は、作業目標を達成する一連の作業手順の設計、および作業手順に沿ってロボットを動作させる制御命令の作成と設定をする作業である。
特に、物品の整列や箱入れ等のロボットにとって複雑な作業では、作業手順とロボットの動かし方を最適化するための試行錯誤が必要で、作業設定に数時間程度必要なため、作業変更が頻発する現場ではロボットの導入あるいは継続的な活用が困難だった。
日本電気株式会社(以下、NEC)は、ティーチング作業を自動化するAI技術「目標指向タスクプランニング」を開発した。同技術によるティーチングプロセスの自動化により次の効果が得られる。
- 作業目標を達成する動作をロボットが自動実行できる
- ロボット稼働までの時間を短縮
- 設定外の事象に自動で対応
ロボットを利用する現場の作業者が作業目標を指示するだけでロボットが自動実行するので、作業変更が頻発し作業環境が変化しやすい現場でも容易にロボット導入・活用できる。
例えば、現場作業者が「複数の部品を棚上のトレイに仕分ける」という作業目標を指示すれば、ばらばらに置かれた複数の部品を適切な順序でピックアップし、棚にぶつからずにトレイに運ぶように、作業手順とロボットの動かし方を自動で最適化する。
入荷部品の棚入れ作業の場合は、部品や棚の配置に応じた作業手順の作成およびロボット動作の設定に、専門家が人手で2~3時間かけていたが、同技術により自動で数分程度に短縮できる。
ロボットを設定する場合、棚の付近や作業台に関係ない部材を混入させない等、例外が発生しないように周辺環境を整えておくか、専門家が様々な状態を想定した作業手順を事前に設定しておく必要があった。同技術により、設定外の事象があっても作業目標の達成に向けた作業手順をその場で自動的に設定し直す。このためロボット用に特別に整備された環境を用意する必要がなくなる。
なお、ロボット活用領域の拡大を目指して、かねてから協力関係にあるオリックス・レンテック株式会社の常設ロボットショールーム「Tokyo Robot Lab.」に、9月初旬から同技術を適用したピック&プレイス自動化ロボットをデモ展示する。同展示では実物のロボットの動作や操作性を体験することができる。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。