少子高齢化による労働力人口の減少や作業負荷増大への対応として、ロボットの活用が期待されている。将来、ロボットが社会で様々な役割を果たすには映像伝送やロボットの動作制御のために通信が不可欠だが、ロボットの増加に伴う通信の輻輳が懸念される。輻輳を回避するには、通信状況に応じて帯域をオンデマンドでコントロールすることが有効で、ロボット制御に通信制御を含めることが必要となる。
株式会社KDDI総合研究所は、2030年を見据えた新たなライフスタイルを提案する調査・応用研究拠点「KDDI research atelier」に、パートナーとの共同によるロボットの通信やプラットフォームに関連する技術の評価・実験を通し、ロボットを活用したサービスの創出を加速する「ロボット工房」を開設した。
ロボット工房では、エンド・ツー・エンド(以下、E2E)ネットワークスライシングによるロボット向け通信帯域が確保された評価ネットワークや低遅延映像伝送、ネットワーク運用見回りロボットなどの環境・技術を利用して、ロボットのユースケース考案から、5G時代のロボット制御やその制御を管理するプラットフォームの設計・開発および評価や実験が可能である。
E2Eネットワークスライシングによる、ロボット向け通信帯域が確保された評価ネットワークでは、KDDI research atelier、KDDI総合研究所、パブリッククラウドの3拠点と接続し、ロボットに必要な制御機能(計算プロセス)を分散展開する環境を提供する。
これにより、通信を活用するロボット制御の多様な検証が可能となる。5Gで実現が期待される通信リソース制御(オンデマンドでの通信帯域・遅延の保証)や、MEC(Multi Access Edge Computing)を活用する低遅延通信を模擬して、将来のネットワーク環境を先取りした実証が可能だという。
また、ロボットと操縦者間の映像伝送において、ロボット側のカメラから操縦者側のディスプレーに表示されるまでのE2E遅延を縮小する、超低遅延映像伝送の技術を活用した検証が可能だ。これにより、視覚と身体感覚との操作のずれをほぼ解消することができ、動きの速い対象物に対して正確な操作が可能になると共に、映像伝送の遅延が原因の一つとされる操縦者のVR酔いが軽減され長時間の遠隔操作が可能となる。
さらに、KDDIのネットワークセンター(以下、NC)の運用管理業務を支援する見回りロボットは、NC内の機器設定や交換、配線などの作業の立ち会いを代行する「立会い支援」や、手動操作または自動でNCの設備状況などの確認を行う「遠隔操作・監視」、ロボットに搭載されたセンサーにより異常を検出するための定期的な「自動巡回」といった能力を備えている。ロボット制御の実証の対象として利用できる。
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