エクサウィザーズ、曲線のファスナーも自動開閉できるAIロボットシステムをJAXAと開発

現在、国際宇宙ステーション(ISS)では、宇宙飛行士による船外作業のリスク低減や、作業の効率化に寄与する船外ロボットアームを導入している。

今後、ロボットによる作業の補助の幅を広げ、船内でも宇宙飛行士をサポートするためには、人の手による取り扱いを前提とした素材の操作が必要となる。

しかし、従来のロボット技術では、物資輸送用バッグ「Cargo Transfer Bag」(以下、CTB)やケーブル類といった、形状が変化する対象を通信の遅延がある環境で操作することは困難であるほか、操作対象のサイズや質量が作業の精度に影響を与えやすいという課題があった。

こうした中、株式会社エクサウィザーズと国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、共同で実施している、有人宇宙拠点内クルー作業の自動化・自律化に向けた技術検討の取り組みにおいて、さまざまな用途に合わせて学習できる汎用性の高い模倣学習プラットフォームを開発した。

そして、同プラットフォームを活用し、物資輸送用バッグのファスナー開閉等、従来の技術ではロボットによる自律操作が困難だった作業を、対象物の位置を固定した環境下において、100%の精度で実現可能なAIロボットシステムを構築したことを発表した。

今回開発された模倣学習プラットフォームは、マルチモーダルデータを活用して、工程の自動化・最適化を可能にするロボットAIソリューション「exaBase ロボティクス」の技術アセットを活用することで、さまざまな用途に合わせて汎用的に学習することができるようになった。

そして、視覚と触覚の情報を併用することで、対象物の位置を固定した状況下において、直線上のファスナーを開ける作業が約93%の精度で可能となることを発表した論文で使用されたモデルアーキテクチャをもとに開発を行い、AIロボットによる柔軟物のファスナー開閉作業を、実用性の高いレベルで実現した。

具体的には、触覚に代わり力覚(関節モータ電流から推定したトルク値)を用いて、柔軟物におけるファスナーの開閉作業を実現した。

また、直線だけでなく、曲線も含む柔軟物のファスナー開閉作業を、対象物の位置を固定した状況下において学習させ、その固定位置における操作を100%の精度で実現した。

上記条件に加え、対象物の位置を左右にずらして学習させ、その後、学習条件とは違う位置に動かした条件下においても、曲線を含むファスナー開閉作業を80%以上の精度で実現した。

なお、このAIロボットシステムは、拡張性および汎用性の高いオープンソースのロボットソフトウェアプラットフォーム「ROS(Robot Operating System)」および、開発環境の変更にも対応可能なオープンプラットフォーム「Docker」をベースとしたシステムにすることで、将来的なロボットの変更などに対応させている。

今後は、同作業の宇宙での適用に向けて、対象物の場所や形だけでなく、重力環境が変化する状況下においても、さらに高い精度で作業が実施できるよう、開発を進める予定だ。

エクサウィザーズ顧問で、上記論文を作成した早稲田大学 理工学術院基幹理工学部表現工学科教授の尾形哲也氏は、「我々の「深層予測学習」は、ピック&プレイスや引き出し開けといった単純な動作ではなく、視覚、触覚、力覚などを組み合わせ、粘性流体や柔軟物体の操り動作を模倣学習する手法です。

このエクサウィザーズとJAXAの共同研究の成果は、この特性を最大限に活かした興味深い応用事例だと思います。今後の展開に大いに期待しています。」と述べている。

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