昨今、人間と安全に協働するためのロボット開発が推進されているが、その一環として、生物のような柔軟さを持つ素材から作られたロボットが注目を浴びている。これらのロボットを実用化するためには、その柔軟性を活かしたロボット制御が重要な課題となっている。
そこで、京都大学大学院情報学研究科 明石望洋助教と東京大学大学院情報理工学系研究科 中嶋浩平准教授ら及び、株式会社ブリヂストンの共同研究グループは、ロボットのアクチュエータとして使用される人工筋肉が創り出す動きを、ニューラルネットワークで計算に活用することにより、人工筋肉を多様なパターンで制御できることを発表した。
この研究では、空気圧人工筋肉という柔軟な駆動素材に注目し、その豊かな動作を計算に利用することで、リズミカルなパターンや予測困難な複雑なパターンなどを自律的に生成可能だと示した。
これらのパターンは、ロコモーションや繰り返し運動に利用され、従来は外部の振動子によって生成されていたが、その振動子をロボットから取り外せることを示唆するものだ。さらに、パターンの変化構造である分岐現象も、ロボットの駆動部材に学習できることを報告した。
特定の動作パターンを学習することにより、学習データに含まれていない異なるパターンの制御も可能になることが示され、ロボットのハードウェアとソフトウェアの効率化、さらには適応的で柔軟な動作を行うロボットの開発に寄与する可能性があるとしている。
また、外部機器が行っていた動作推定や制御などの情報処理が、ロボットの身体にあたる人工筋肉で可能になることも示した。
これにより、ロボットの外部装置や中央処理機、通信の負担を軽減し、よりスマートな設計に寄与すると考えられる。さらに、特定のパターンを学習することで、分岐に関連する多様なパターンも一度に学習可能であることが明らかになった。
今後は、ソフトロボットだけでなく、光コンピュータや化学反応、自然現象など、様々な情報担体での物理リザバー計算の活用が研究されている。先の研究成果は、従来の計算機で困難だった情報処理でも、その物理現象の計算特性に合致していれば、省計算能力で実行可能であることを示唆するものだ。
3者は、これらの物理現象を利用した計算の研究に対しても、情報処理の高度化や効果的な活用方法に対する知見を提供する可能性があるとしている。
なお、この研究成果は、2024年4月19日に、国際学術誌「Advanced Science」にオンラインで掲載された。
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