無人搬送車(以下、AGV)は、自律的に稼働するものと、遠隔地やクラウド上のサーバから制御するものがある。
遠隔制御の場合、現場の無線ネットワークを通じてAGVの状態認識や制御データの配信、搭載カメラで撮影した周辺映像の配信を行うが、柱・壁・設備などの遮蔽物や移動の影響で通信品質が低下し、円滑な制御に必要な通信の遅延要件を超過することがある。
さらに、映像データや制御データなど通信トラフィックが混在して無線リソースの競合(順番待ち)が発生すると、通信遅延が変動することがある。これらはAGVの稼働停止や状態認識・制御の不安定化を引き起こす。
これらの問題は、複数の無線ネットワークで繋がりやすい環境を構築することで、ある程度は防ぐことができるが、通信量が増大しアクセスが集中すると、通信の断絶や遅延が発生し、制御が不安定になるという課題がある。
そこで日本電気株式会社(以下、NEC)は、倉庫や工場におけるAGVを遠隔制御する際に、無線通信の遅延を抑えて安定化することで、AGVの停止や不安定な稼働を回避し、高い作業効率を実現する技術を開発した。
この技術は、通信品質の変動を予測し、最適な無線ネットワークに切り替えることで、AGVの停止を回避する。
具体的には、通信の状態をパケット単位でリアルタイムに分析し、変動する通信品質を予測した上で、最も遅延が少ない無線ネットワークに切り替える。これにより、品質の良いネットワークに接続し続けることができ、通信遅延を抑え、AGV制御における通信の遅延要件の超過を避け、稼働停止を回避する。
またNECは、あらかじめ設定したデータの内容や、要求される通信性能の要件に応じて、データの送信タイミングを調整する通信トラフィックの制御技術を開発した。これにより、例えば映像データはAGVの稼働に影響のない範囲で遅延を許容しつつ、制御データは優先して送ることで、AGVの安定稼働を実現することが可能なのだという。
NECはこの技術について、2024年度中に実際の倉庫で実証実験を行い、2025年度の実用化を目指すとしている。
なお、この技術は、遠隔地のサーバがロボットの監視や制御を行う、あらゆるシステムに適用可能とのことだ。将来的には、自動運転の遠隔管制、ドローンの遠隔操縦、建設機械の遠隔制御などに活用する計画だ。
またNECは、9月10日~13日に東京ビッグサイトで開催される「国際物流総合展2024」でこの技術を紹介する予定だ。
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