CES2025レポートの第二弾は、プレショーキーノートで登壇した、NVIDIAだ。
個人向けコンピュータ向けにBlackwellアーキテクチャのGPUを発表し、デジタルAIや物理AIについて説明したところまでは、昨年のAI SUMMIT JAPANで話された通りなのだが、今回注目したのは、物理AI向けのプラットフォーム「COSMOS」についてだ。
ジェンスン・ファンCEOの語る、物理AIとは?
現在、NVIDIAというと、パソコン向けのグラフィックボードメーカーや、生成AIブームを背景に倍々ゲームで売上を伸ばしているデータセンター向けGPUを思い浮かべる人が多いだろう。
もちろん、その分野も注目の分野なのだが、日本のロボット産業に対し、ジェンスン・ファンCEOは熱い眼差しを送っている。
これは、昨年のAI SUMMIT JAPANでも述べられたことだが、現在主流となっている生成AI関連技術は「デジタルAI」で、日本に対して期待しているのは「物理AI」の分野だということだ。
物理AIとは、何だろう?
簡単にいうと、ロボットや自動運転カーを制御する上で活躍するAIのことだ。物理的なデバイスを制御することから「物理」と名付けられている。
デジタルAIとの違いとしては、物理AIはモーターを駆動し関節を動かしたり、自動運転などを行う必要がある点だ。
実社会で物理AIを動かす場合、事故を防ぐためにはデジタルツイン上でのシミュレーションが欠かせない。
さらに、物理AI用のチップをエンジニアが簡単に動かせるようになるためには、チップの制御を仮想化し、エンジニアにとって利用しやすい環境を準備することが重要になる。
この環境が「NVIDIA Cosmos」なのだ。
NVIDIAはデジタルAIの分野では、MetaのLlamaと呼ばれるプラットフォームがあるが、このレイヤーに当たるプラットフォームを物理AIの世界で実現しようとしている。
NVIDIA Cosmosとは
ジェンスン・ファン氏によると、NVIDIA Cosmosとは、「人間の歩行、手の動き、物の操作、倉庫や工場などの産業環境」を記録した、約2,000万時間分の映像データで学習したプラットフォームなのだという。
すでに人型ロボットを開発するAgility、Figure AIや、自動運転分野のUber、Waabi、Wayveなどの企業がCosmosを活用しているという。
使い方としては、例えば、自動運転の車を開発している場合、雪の道路をデジタルツイン上に再現し走行シミュレーションを行うことができる。また、実際につくったAIモデルをCosmosをつかって改善したり強化学習を行うことが可能になる。
NVIDIAはトヨタと自動運転の分野で協業
また、ジェンスン・ファン氏は、自動運転カーの分野でトヨタと提携したことを発表した。
市場規模1兆ドルともいわれる自動運転市場において、大規模言語モデル開発環境のような立ち位置になることをNVIDIA Cosmosは目指している。
日本企業が、この立ち位置のプラットフォームを開発することは難しいと思われるが、得意分野であるロボティクスにおいて、物理AIのモデルを作り、実産業に投入する可能性を持っているといえる。
単純に、柔軟な動きを可能とする人型ロボットをつくればよいということではないが、人手不足が叫ばれる中、産業の中でロボットの柔軟性が求められていることもあるのは事実だ。
はじめに開発をすることは決して簡単ではないが、ファーストペンギンとして物理AIの世界を開拓してほしい。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。