教育IoT・AI最前線、先生とAIロボット「Musio」が協働する英語の授業 ―第9回教育ITソリューションEXPO(EDIX)

教育分野のIT専門展「教育ITソリューションEXPO(EDIX)」第9回が5月16~18日、東京ビッグサイトで開催された。2020年の学習指導要領の改訂にむけ、日本でも教育にテクノロジーを活用するEdTech(エドテック)が注目されるなか約700社が出展。小・中・高校、塾・予備校の教師・関係者を中心とした約35,000名が足を運んだ。

また、同展示会では3日間にわたりセミナーも開催。本稿では、「学びNEXT 専門セミナー」から、同志社中学校・高等学校英語科教諭/EdTech Promotions Managerの反田任氏の講演の内容を紹介する。

講演テーマは、「英語4技能を楽しく習得!同志社中学校に学ぶ『先端テクノロジー×英語教育』」だ。

トップ写真:同志社中学校でのAIロボット「Musio」を活用した授業風景(提供:同志社中学校・高等学校 反田任氏)

※第9回教育ITソリューションEXPO(EDIX)の展示会の模様を紹介した記事はこちら。
EdTech(エドテック)とは何か、教育現場が求めるIoT・AIの活用法 ―第9回教育ITソリューションEXPO(EDIX)

AIを活用し、生徒の”アクティブな”学びを促進

2020年に改訂となる「学習指導要領」。その基軸となるのは、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)」(文部科学省資料:新しい学習指導要領の考え方)だ。グローバルな競争環境や第4次産業革命といった社会の変化に対応できる人材の育成が求められていることが背景にある。

とくに英語教育の改善が課題となっている。語学教育においては、「読む(Reading)」「聴く(Listening)」「話す(Speaking)」「書く(Writing)」の4技能をバランスよく学習することが必要だと言われる。しかし、学校における従来の英語教育では、教科書などを通じた「Reading」や「Listening」に重点が置かれ、コミュニケーションに不可欠な「Speaking」を学ぶ機会が少なかった。

その理由の一つは、「学校の教室では先生1人に対して生徒多数であるため、生徒ひとりひとりが発話する機会が限られる」ことだと同志社中学校・高等学校の反田氏は指摘。アクティブなラーニングが進まない物理的な壁があった。

その壁を克服するための手段として、ITや人工知能(AI)などのテクノロジーが期待されている。最近では、海外で生まれたEdTech(エドテック:Education×Technology)という言葉が、日本でも注目を集めている。

EdTechを実践、教師とAIロボットが協働で行う英語の授業
同志社中学校・高等学校英語科教諭/EdTech Promotions Manager 反田任氏

同志社中学校・高等学校では、EdTech Promotions Managerをつとめる反田氏が中心となり、学校教育にいち早くEdTechを導入。2014年から生徒1人に1台のiPadを導入するなどのICTの活用や、アウトプットを重視した教育を実践してきた。

そして2016年からは、英語教師の”分身”としてアメリカのAKAが開発した英語学習AIロボット「Musio」(ミュージオ)の実証を開始。2017年10月には20台を導入して「専用教室」を設置した。

「専用教室」では、「生徒1人に1台のMusio」を提供し、生徒のアクティブなSpeakingの学習を進めている。

英語教師の”分身”として活躍、AIロボット「Musio」

「Musio」は、アメリカのAKAが開発したAIエンジン「Muse」を搭載したロボット。言語や視覚データを収集しユーザーとのコミュニケーション過程をディープラーニングにより学習することで、柔軟な対話ができるという。

同講演では、「チャットモード」と「チューターモード」という、2つの機能の使用例が紹介された。

「チャットモード」は、生徒が英語で話しかけると、「Musio」がネイティブ英語で返してくれるという機能。インターネット上のさまざまな情報を用いる。たとえば、「アメリカの大統領は誰か」と訊くと、「ドナルド・トランプ」という名前にくわえ、そのプロフィールも教えてくれる(反田氏の講演で紹介された例)。

また、「Musio」には顔認証カメラが搭載されており、「生徒が誰か」を登録、特定できる。生徒と「Musio」が交わした音声の会話は、生徒それぞれのチャットヒストリーの中に文字として記録される。チャット画面からその会話履歴を確認し、学習に活かすことも可能だ。

「チューターモード」は、事前に設定した教材にもとづいて、レベルや目的にあわせた英語学習ができる。たとえば、生徒がある構文を覚える場合、その一文を「Musio」に向かって発話(Speaking)する。すると、「Musio」はそのイントネーションや発音を評価し、認識できれば「Cool」や「Great」、改善が必要であれば(認識できなければ)「Try again」などと回答する。

教育IoT・AI最前線、教師とAIロボット「Musio」が協働で行う英語の授業 ―第9回教育ITソリューションEXPO(EDIX)
英語学習用AIロボット「Musio」(提供:AKA LLC)

”生徒は勉強が好き”をAIロボットが引き出す

「Musio」を導入した結果、「英語を恥ずかしがらずに発話できる生徒が増えた」と反田氏は語る。

英語が好きでも、性格的に「シャイ」であるため、スピーキングが苦手な生徒もいる。そのような生徒に、他の生徒の前で教師が何度も「Try again」と言うと、生徒は委縮してしまう場合がある。

しかしそんな生徒でも、相手がロボットであれば気兼ねなく繰り返しトレーニングできるという効果があるのだ。

また、自分のペースで学習ができることも、生徒は喜んでいるという。

「Musio」以外にも、iPadを生徒全員に提供するなど、ICT活用を推進してきた同志社中学校。それらのツールを活用してどうだったか、生徒にアンケートを行ったところ、iPadで利用できる「デジタル教科書」が高評価だったという。

従来の講義形式の授業であれば、「先生の発音がわからなくなると、生徒はそこで学習を止めてしまう場合がある」と反田氏。しかし、「デジタル教科書」なら自分が習得できるまで何度も発音を聴き、自分のペースで学習ができるのだという。

これらの取り組みから、「自分のペースで繰り返す分には、生徒は学習を苦痛と感じない。むしろ、生徒は学習したいと思っている」と反田氏は気づいたという。

テクノロジーは、教師が生徒と向き合う時間を創る

「Musio」の活用について生徒にアンケートをとったところ、導入する以前より英語の授業が楽しくなったと回答した生徒が96%(51名/53名)。英語の発話に自信がついたと回答した生徒が72%(38名/53名)だったという。

「Musio」をとおして、「英語の発話に生徒が自信を持てる」ことも成果だと反田氏は述べた。

生徒は、自分の発話がよいのか悪いのか、自分で判断できないため気にしている。そこで、「Musio」から「Good job」などの評価を受けると生徒は嬉しいと感じ、学習が楽しくなるのだ。「学習には自己肯定感が大切」と反田氏は語った。

反田氏は、「英語学習の目的は、ヒトとコミュニケーションができ、英語をとおして世界の情報を知り、発信できること」として、「Musio」はあくまで一連の英語学習のプロセスの一つであると強調。「Musio」とのトレーニングのあとは、ネイティブとの会話やディスカッションの機会なども積極的に取り入れている。

また、「Musio」を導入したことによる教師側のメリットの一つは、「生徒ひとりひとりと向き合える時間が増えた」(反田氏)ことだという。

「Musio」という”分身”がいる分、教師は生徒ひとり一人の発音を繰り返し確認する必要はなくなる。その代わり、うまく発音ができないで困っている生徒を見つけ、「こう発音してごらん」などとアドバイスができる時間を捻出できるのだ。

「AIは万能ではない」と反田氏。しかしAIロボットなどのEdTechをうまく活用し、「生徒が自発的に勉強できる環境をつくる」ことが重要だと語った。

【関連リンク】
同志社中学校(Doshisha Junior High School)
英語学習AIロボット「Musio」、教育現場の新サービス「Academy Plan(アカデミープラン)」を開始
AIロボット「Musio」公式サイト
新しい学習指導要領の考え方(文部科学省)

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